地球の法則と選ぶべき未来 ドネラ・メドウズ博士からのメッセージ ドネラ・H・メドウズ著/枝廣淳子訳 ~地球ではなく人間の未来にとって重要なこととは

地球の法則と選ぶべき未来 ドネラ・メドウズ博士からのメッセージ ドネラ・H・メドウズ著/枝廣淳子訳 ~地球ではなく人間の未来にとって重要なこととは

評者 高橋伸彰 立命館大学教授

 ハーバード大で生物物理学を専攻し博士号を取得したドネラ・H・メドウズは、母校で研究を続けることよりも、ローマクラブから委託された新しいプロジェクトを選択した。その最初の報告書が、「世界中のマスコミに不吉な予言の嵐を巻き起こした」『成長の限界』である。日本語をはじめ35の言語に翻訳され、世界中で300万部以上も売れた本はビジネスとして大成功だったかもしれない。しかし、ドネラは同書が「世界の破滅の宣告」のように受け止められた点が不本意だった。実際、多くのマスコミは同書の序論で示された三つの結論のうち、「危険なもの」と「緊急性のあるもの」だけを取り上げ、「希望のもてるもの」には触れなかったからだ。

ドネラは人間が生き方を変え、世界がシステムを変えるなら、持続可能な道を歩むことができるという『成長の限界』の真意を伝えるため、ダートマス大学で得たテニュア(終身在職権)の地位を捨て書くことに専念した。ドネラが好んで新聞のコラムを発表の場としたのは、マスメディアにこそ「変える力」があると信じたからだ。2001年に59歳で死去するまで、ドネラは25の新聞に800本ものコラムを連載した。本書にはその中から選ばれた32編が実に読みやすい日本語で翻訳されている。

読者が読んでみたくなる「名場面」を小出しに紹介するのは書評の妙だが、全編「名場面」に溢れる本書を映画の予告編のように紹介するのは至難である。実際、「地球上のあらゆる種の中でも、自らのちっぽけな危険を地球全体の危機だと勘違いしてしまうほどうぬぼれが強いのは、私たち人類だけです」という最初のコラムには痛烈な“落ち”が待っている。「私たちがありったけの爆弾を爆発させて、地球上に生き残ったのはわずかな原生バクテリアだけになってしまったとしても、バクテリアたちは平然と、数十億年前と同じように新たな種の変化を始める」からだ。要するに「地球は、人類など恐れてはいない」のだ。

それでは、何が危険にさらされているのか。「私たちが後生大事にしている考え方のいくつか……例えば『永久に続く経済成長』という幻想」だとドネラは警告する。これからも地球と共存できるように、私たち人間が生き方やシステムを変え、「新しい世界を生み出すことができるかどうか?」が問われているというのだ。そう考えると、「永遠に成長すること」を目指す経済学の掟よりも、「足るを知る」地球の掟を選択するほうが、地球ではなく人間の未来にとってはるかに重要なことがわかるはずだ。

Donella H.Meadows
1941年生まれ。米国カールトン大学で化学、ハーバード大学で生物物理学を修める。72年にローマクラブ委嘱の「成長の限界プロジェクト」に加わり、その後の環境保護運動に多大な影響を与えた。ダートマス大学で研究活動の後、執筆に専念。2001年死去。

ランダムハウス講談社 1575円 205ページ

  

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