あの「謎の赤い路線バス」池袋でついに運行開始 街中をぐるぐる回る2ルートの「IKEBUS」

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車体の完成に続き、運行事業者の公募が行われた。選ばれたのはウィラーエクスプレス。ピンクの高速バスで一般に知られているが、グループ全体では全国各地でレストランバスを運営したり、シンガポールでオンデマンドの自動運転を行ったり、京都丹後鉄道の列車を運行したりと新業態に果敢に進出することで定評がある。街中を周遊する路線バスの運行も2012年に関西で行っていたことがある。

ウィラーの村瀬茂高代表は、「非常にインパクトある車両。これが毎日走ることで街のシンボルになる」と期待する。時速19kmというスピードについても、「速さだけが移動の魅力ではない」と言い切る。

eCOM-10には屋根に太陽光パネルを設置して、走行中に太陽光パネルでバッテリーを充電するタイプもあるが、イケバスに太陽光パネルは設置されていない。また、eCOM-10同様、エアコンも設置されていない。窓を全開しても夏場は厳しいだろう。水戸岡氏は、「環境にやさしいが人に厳しい。夏は暑く冬は寒い」と笑い、「この車が地球環境の問題を考えるきっかけになってほしい」と期待する。だが、公共交通機関という性格上、車内温度の問題は来年の夏までになんらかの対応が行われるかもしれない。

池袋の新しいシンボルに

運行時間は10時から19時台で、2系統あるルート合わせて1日に62便が運行する。停留所は11カ所あり20分おきの運行となる。運賃は1回200円。ほかに1日券や2日券も販売される。区では「乗車率6~7割が目標」というが、村瀬代表はもう少し慎重に考えているようだ。

とはいえ、ウィラー側も黒字経営をする必要があるので、利用者を増やすための対策を講じていくはずだ。「まだお話しできないが、いろいろな仕掛けを考えていく」と村瀬代表は話す。ほかの路線バス、JR、都電荒川線などとの連携、あるいはレストランバスのような特別運行といったアイデアもウィラーならやってのけるかもしれない。

イケバスは路線バスだけでなく、貸し切りバスとしての事業も行われる。11月3日には、結婚式を挙げた新郎新婦がイケバスで池袋の街中を走るという貸し切り運行が実施された。区内の保育園児を2020年6月開園予定のキッズパークに送迎する事業も行う計画だ。

シンクトゥギャザー、水戸岡氏、ウィラー、高野区長、そして美化スタッフたち。多くの人の思いが実を結んだ。赤い車体のロンドンバスがロンドンのシンボルであるように、イケバスが池袋のシンボルと呼ばれる日がやってくるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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