森田芳光・映画監督--映画の出来を決めるのは原作よりもチーム力だ

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--ご自身は株式投資でどのような経験をしましたか。

インターネットで株の売買が可能になってからすぐに始めました。昔は株を買うのも大変だったじゃないですか。いちいち証券会社へ行く必要があったのが、ネットならワンクリックで株が買えてしまうのはすごいなと。銘柄選びといっても単純ですよ。どこかの鉄道会社が新路線を作ると聞けば、それで利用者が増えるから儲かるだろうとか、シンプルに株をやっていたんです。

ところが、あるときに、人から「森田、マザーズ上場の非常に小さな会社ならすぐに儲かるからやってみろよ、競馬より面白いぞ」と言われて手を出したら、とんでもないことになっちゃった。だから、自分にもとんでもない経験があったわけですよ(笑)。

今の映画界は、最大公約数的な企画が優先される

--大作から今回のような中規模映画まで撮っていますが、どちらのほうがやりやすいですか。

どっちがというのではなく、両方やらないと。みんなが自分のストレスや寂しさから救ってもらえる娯楽映画も必要だし、『わたし出すわ』のようにちょっと考えさせられる映画も必要なんです。

--映画業界には資金が集まる映画と、なかなか集まらない映画があります。おカネの使い道というテーマの裏にはそういう風刺もある?

もちろんそれはありますよ。映画の出来を左右するのは、監督を中心に俳優やスタッフが一丸となっていかにチームとしていい映画を作るかという、チーム力だと思う。

ところが今の日本映画の状況は原作が200万部売れたベストセラー原作だから配給がうまくいくだろうとか、この芸能事務所の人気俳優を使えば、視聴率が稼げるだろうとか、最大公約数的な担保みたいなものにおカネを使っている。実際のチーム、本当に才能があるチームに対して、おカネを使っていないんです。経済でいえばリーマンショック前の状況によく似ています。

--有名な原作や俳優を起用した企画の名前を聞いただけで、スポンサーも「わたし出すわ」と。

そうなんです。その企画の名前だけが重要視されて、どんな人たちが映画を作るかは関係なくなっちゃった。おカネを出す側も、誰にどういうふうに出すかを見極めないと。

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