「史上最長政権」でも首相の表情が晴れない理由 「桜を見る会」疑惑で浮上する「桜解散」説

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政府与党としては来年1月1日発効が前提となる日米貿易新協定の会期内成立を最優先し、臨時国会を会期通りの12月9日に閉幕させて、その後は安倍首相の訪中と訪印、10兆円規模とされる今年度補正予算案と来年度予算案の年内編成に全力を挙げることで、事態の鎮静化を図る構えだ。

ただ、過熱化するメディア取材の現状などから、「当分は国民レベルでの首相批判も収まらないのでは」(官邸筋)との不安も拭えない。「桜を見る会」の招待者に関して、省庁別の推薦者名簿は保存されており、19日の閣議後会見でも、一部閣僚が「求めがあれば適切に公開する予定だ」と述べたことも、問題長期化の要素になりそうだ。

飛び交う年明けの「桜解散」説

これまでの安倍政権のスキャンダルでは衆院解散説が野党側への牽制効果が大きかったのは事実。このため、今回も「通常国会冒頭で補正予算を処理したうえでの1月下旬解散・2月中旬総選挙」という、いわゆる「桜解散」説も国会内で飛びかう。

ただ、次期衆院選での野党共闘の指南役を自任する国民民主党の小沢一郎氏は18日夜、「年明けの解散・総選挙がささやかれている今日において、(野党結集は)急務だ」と強調する一方、主要野党リーダーの立憲民主党の枝野幸男代表も「こちらが解散に追い込む」と語るなど、「今回は牽制になっていない」(自民幹部)のが実態だ。

今年4月13日に開催された桜を見る会で安倍首相は、令和改元を踏まえて「平成を 名残惜しむか 八重桜」「新しき 御代(みよ)寿(ことほぎ)て 八重桜」と自作2句を披露して会場を沸かせた。

その時点では半年後のピンチなど夢想もしなかったはずだが、今や永田町で首相の「五輪花道論」も取りざたされている。「結果的に、首相にとってあれ(今年の桜の会)が最後の晴れ舞台になるかも」(自民長老)との声も出始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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