都心優良ビルも競って“値引き” 空室率は峠を越えたが賃料に底打ち感なし《特集・不動産/建設》

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大阪、横浜は供給過剰が長期化

大阪では09年以降、ビル供給が大幅に増加し、11年ごろには「大阪北ヤード開発」が完成する見込み。供給のピークは12年ごろとみられ、供給過剰が顕著となる可能性が高い。

横浜もみなとみらいなど11年まで大量供給が続き、今後も厳しい。一部に、ビル市況の悪化による計画の見直し、事業主体の経営破綻などによる計画の遅れが見られる。

名古屋は09年に入って、「トヨタショック」の影響などから、「名駅」周辺の空室率が大幅上昇した。供給のピークは今年後半であり、当面は景気低迷の影響もあって、市況悪化が続く見通し。ただ、「来年の新規供給量は大幅に減少する」(三鬼商事)とみられ、空室在庫の増加に歯止めがかかる可能性はあるが、最近の円高など輸出産業の環境激化が需要面でのリスクとなりそうだ。

札幌、仙台、福岡など、その他の地方都市については「オフィス不況は全般に全治5年から10年」と、ニッセイ基礎研究所の松村徹・上席主任研究員は言う。仙台なども昨年来、供給過剰が深刻で、新築の空室率は50%を大きく超えている。不動産ファンドを含めた東京資本が近年、大型オフィスビルの再開発に大挙して集中投資した結果、深刻な需給ギャップに悩まされている。

地方都市には人口減少や高齢化など、構造的な需要低落要因も大きい。今後の地方分権推進による地方都市の活性化に期待もあるが、今のところ「東京一極集中」の流れが変わる兆しは見えない。


(週刊東洋経済)
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