都心優良ビルも競って“値引き” 空室率は峠を越えたが賃料に底打ち感なし《特集・不動産/建設》

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 シービー・リチャードエリス総合研究所の前澤威夫専務取締役は、「昨年後半以降、グレードの高いビルで空室率の悪化による賃料低下が目立ったが、そうしたビルが価格調整すると、逆にそこから埋まっている」と言う。このため、下のグラフを見てもわかるとおり、直近では新築ビルの賃料低下スピードにはやや鈍化の兆しが見える。

森トラストの吉田副社長も「都心の立地のよい所に建つ新築ビルは、賃料を下げれば埋まるので心配はしていない」と話すが、それだけ競争力があるというわけだ。

景気“二番底”形成なら賃料は一段低下へ

しかし、「空室率は峠を越えたが、賃料は依然底打ち感がない」(鈴木弘久・野村不動産ホールディングス社長)との見方もある。もし景気がここから“二番底”へ向かった場合、都心全体の賃料相場が一段と厳しさを増すことが予想される。

加えて11年以降は東京でのオフィス供給は大きく増える見通しだ。森ビル、森トラストの調査データを見ると、過去の年間平均供給面積104万平方メートルに対して、10年は87万~89万平方メートルだが、11年、12年は過去の平均を40~50%も上回る予想。この点からも、景気の軟弱地合いが長引いた場合、東京のオフィス賃料水準は低迷が続く懸念がある。

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