アマゾン「キンドル」が日本上陸、出版革命の突破口となるか

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アマゾン「キンドル」が日本上陸、出版革命の突破口となるか

インターネット小売り最大手の米アマゾン・コムは19日、米国限定だった電子ブック端末「キンドル」の出荷を世界100カ国以上で開始した。

米国では2007年11月に初代機を発売。今年2月には「キンドル2」、6月に「デラックス」と後継機を相次ぎ投入し、「米アマゾン随一の売れ筋商品となっている」(キンドルのプロダクトマネジメントディレクター、チャーリー・トリッツシュラー氏)。

最大の強みは従来の電子ブックにはなかった使い勝手のよさと、コンテンツの豊富さにある。今回売り出されたキンドルは約289グラムと軽量ながら、1500冊分の書籍を保存できる。コンテンツも日本の場合、英語書籍28万タイトルから購入できるほか、ニューヨーク・タイムズなど複数の新聞や雑誌の定期購読も可能。すべての書籍は60秒以内に端末から直接ダウンロードできる。
 
 これまで書籍は音楽や映像と比べて、デジタル化で大きく後れを取ってきた。が、近年は米国を中心にキンドルやソニーの「リーダー」など高機能な対応端末が増えるにつれて、コンテンツ数が拡大。本格的な普及を見据え、端末メーカーも米国外へ進出するなど事業拡大へ本腰を入れ始めている。

今や売上高の半分近くを米国以外で稼ぐアマゾンにとっても、キンドルの海外展開は成長に欠かせない。ただし日本で本格普及するには、いくつかの障害がある。

一つは、現時点で英語書籍以外の取り扱いがない点だ。長期的には多言語での展開を見込んでおり、日本でも複数の出版社などと交渉中とみられるが、日本語版の開始は未定。その前に、出版社から版権を得られるかという大きな課題が立ちはだかる。

ビジネス環境の違いもある。米国では書店側が販売価格を自由に決めることができ、アマゾンでも一部書籍はキンドル経由のほうが安く購入できる。一方、日本では出版社が決めた価格を書店が維持する「再販売価格維持制度」が定着している。

数年前には日本でもソニーなどが電子ブックを投入したが、使い勝手の悪さやコンテンツの少なさがネックとなり、事実上撤退した経緯がある。はたしてキンドルは、日本でも新たな出版流通を築く突破口となるか。
(倉沢美左 =週刊東洋経済)

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