第5回 ドイツから考える、体罰が生まれない理由

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設立100年を越えるスポーツ・クラブも

スポーツ・クラブの数は膨大で種目も多い。日本のNPOの法律は1998年にでき、データベースサイト「NPOヒロバ」には約4万9000のNPO法人が登録しているが、ドイツはスポーツ分野だけでもその倍近くの約9万1000ある(ドイツオリンピックスポーツ連盟統計)。さらに設立100年を越えるところもざらにある。ドイツ各地でスポーツ活動の場があるということが数からも推して知ることができよう。

また数多くの競技の部署を持った総合型スポーツ・クラブも多い。ドイツとスポーツといえば近年、日本人選手も活躍するサッカーを想像する人も多いだろう。ブンデスリーガ(連邦リーグ)のチームも実はスポーツ・クラブである。ほとんどはサッカーのみのクラブだが、例えばハンブルガーSVはバドミントン、アイスホッケー、ゴルフ、水泳など数多くの競技の部署を抱えた総合型スポーツ・クラブだ。実はJリーグが作られるときにドイツのスポーツ・クラブが随分参考にされた。

ちなみにエアランゲン市の場合、人口10万人の町だが、スポーツ・クラブは100程度ある。これだけの数があると、町全体を見た場合スポーツ・クラブは生活の質や市民の健康増進のインフラとしても存在感が大きい。実際に行政のスポーツ・イベントやプログラムを実行するときにスポーツ・クラブと協力して行うこともある。

また年に一度、市のホールで「スポーツマン舞踏会」が行われるが、ここでは正装したスポーツマンが集まり、社交ダンスを楽しむほか、活躍したスポーツマンの顕彰なども行われる。
 また市内のスポーツ・クラブ連盟の会長以下、市長やスポーツ大臣に相当するポストの政治家、議員、スポンサーの銀行をはじめとするVIPも参加するが、そもそも行政マンや政治家もいずれかのクラブの一メンバーということもある。
 ともあれNPOに相当するクラブは「市民の組織」であるが、行政や政治とも関わりながら、町の生活の質を向上させることにつながっている。

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