シャープの大型液晶工場が稼働、巨大な供給力をどう埋めるのか

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ソニーは液晶テレビで世界シェア2位、1520万台(08年度)を販売する。堺工場の運営会社にも出資しており、大口供給先として期待は大きい。だがソニーが堺工場から購入するパネル量は、合弁への出資比率に応じて購入する契約。当初の出資比率はわずか7%で、11年4月までに段階的に34%への引き上げを表明しているが、追加出資が行われるかは不透明だ。圧倒的な供給能力を使いこなせるのか、業界では疑問視する声もある。

海外販売へ異例の試み

そうした中、新たなパネル供給先としてささやかれているのが、オランダの電機大手フィリップスだ。同社は欧州で強いブランド力を持ち、08年は830万台の液晶テレビを販売した。

さらに複数の業界関係者によれば、シャープは海外でフィリップスの液晶テレビのブランドライセンス生産を検討しているという。これはフィリップスのブランド名をそのままに、生産、販売を丸ごと請け負う生産方式だ。すでに船井電機が同契約の下、北米地域でフィリップスブランドの液晶テレビを生産・販売している。シャープが同様の契約を結べば、他社にパネル販売するだけでなく、相手先のテレビ製造にまで踏み込むことになる。これは他に例を見ない新たな試みとなる。

シャープは国内では液晶テレビ市場で4割強と断トツのシェアを誇るが、世界市場では9%にとどまる。だがフィリップスのブランド名を冠せば、課題視されてきた海外市場の販路も広がる。

「堺工場の稼働に向け、びっくりするぐらい世界中から注文をとっている」。片山社長は以前こう胸を張っていた。その言葉どおり、最新鋭工場をフル稼働に持っていけるのか。巨額投資回収に向けた動きに注目が集まる。

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(西澤佑介 =週刊東洋経済)

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