政権運営の中でマニフェストをレベルアップしていく姿勢こそ必要

政権運営の中でマニフェストをレベルアップしていく姿勢こそ必要

塩田潮

 財界と政府首脳との初顔合わせがやっと実現した。日本経団連の御手洗会長が5日に直嶋経産相、翌6日に鳩山首相と会談した。民主党は自民党政治の政官業一体構造の打破を唱える。「脱官僚」はその一環だが、もう一つの「脱財界」の声は聞こえてこない。

 38年前、参議院議員の青島幸男氏が当時の佐藤首相を「財界の男めかけ」と痛罵した。言葉はきつかったが、自民党政権が財界の利益の実現と擁護に理解があったのは間違いない。
 一方、民主党はもともと財界との関係は希薄で、むしろ「距離の遠さ」は政権党のアキレス腱と懸念する声も多い。鳩山首相の小学校時代の同級生で財界人の水野元西武百貨店社長は、「絶えず企業献金をもらって歩かなければならない議員なら財界と関係ができるけど、鳩山首相にはそれがない。いままで野党だったから、企業側からにじり寄ってくる関係もない。だけど、ネットワークを広げていかなければ」とアドバイスを口にした。
 財界と政権との関係でいえば、1956年、現首相の祖父の鳩山一郎内閣の時代、日ソ復交に乗り出した首相に、「自由主義陣営」「反共」を唱える財界側が直接、退陣を迫ったことがあった。話を聞いた首相側近の河野農相が「財界人が何の権限があって総理に辞めろと言ったりするんだ。われわれは国民から何万という票をもらって政治をやっている」と経団連の幹部を怒鳴りつけた。経団連の石坂会長は一言も反論できなかったという。

 重要なのは政府と財界のそれぞれの使命、責務、役割の明確化と自己認識であろう。財界も「経済に疎い民主党」と極めつけるだけでなく、「蜜月」だった自民党政権時代との違いに敏感にならなければならない。
 民主党政権も、マニフェストの実現とともに、経済情勢への対応など臨機応変の舵取りも視野に入れる必要がある。野党時代のマニフェストを実際の政権運営の中でレベルアップしていくという姿勢こそ政策構想力を高める道である。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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