黒田日銀総裁、GDP下振れ時の対応に言及

従来よりも、一歩踏み込んで発言

2月18日、黒田東彦日銀総裁は、仮に今年度のGDP成長率が日銀見通しに届かないなどシナリオ下振れのリスクが顕在化すれば、ちゅうちょなく追加緩和に踏み切るとの見解を示した。都内で1月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 18日 ロイター] -黒田東彦日銀総裁は18日の会見で、仮に今年度の国内総生産(GDP)成長率が日銀見通しの2.7%に届かないなどシナリオ下振れのリスクが顕在化すれば、ちゅうちょなく追加緩和に踏み切るとの見解を示した。

これまでは「上下双方向のリスク」に適切に対応すると述べてきたが、前提条件を明示しながらも、やや踏み込んだ発言といえる。ただ、現時点では2.7%成長は可能とも述べ、追加緩和期待が闇雲に盛り上がることにはクギを指した。

今後は、どのようなデータや現象が顕在化した時に、「下振れリスクの顕在化」と日銀が認識し、追加緩和への決断をするのかが焦点になる。

この日の会見では、市場予想を下回った2013年10─12月期のGDPを受け、民間エコノミストの一部から2.7%の達成は困難との見方が出ていることに対し、日銀シナリオの下振れの可能性とその際の対応策について質問が出た。

黒田総裁は「経済物価情勢を点検して上下双方向のリスクが明らかになれば、それぞれに対応した政策の調整を行うということにしているので、その点はまったく変わりない」と述べた上で「指摘のようなリスクが顕在化することがあればちゅちょ無く現在の量的・質的金融緩和の調整を行うということになろうと思う」と語った。

同時に「今のところ順調に経済は推移しているし、経済見通しとして発表しているところに沿って動いていると思っており、今の時点で2.7%が達成できないことは考えていない」とも表明。直ちに追加緩和の検討に入る情勢ではないことを強調した。

表面的にみると、これまでの見解を繰り返しているように見えるが、GDP成長率の達成をめぐる今後のデータ次第では、下振れリスクが顕在化しているとの情勢判断をする可能性に言及した点が、やや踏み込んだ発言ともいえる。

実際、日銀の見通しを達成するには、今年1─3月期に前期比プラス2.5%程度、年率換算で10%の高成長を実現しないと達成できない。どの程度の下方かい離で下振れリスクの顕在化と見るか、今のところはっきりしないが、最近の関東甲信地方における2週連続の大雪で、自動車などの生産が一時的にストップしていることや休日の人手が少ないことなどを勘案すると、頼みの内需が盛り上がらない懸念も出てきている。

一方で、黒田総裁は会見で、目標達成に向けた強気姿勢を維持。「日本経済は2%の物価安定目標の実現に向けた道筋を順調にたどっている」とし、「2014年度終わりから2015年度にかけて2%程度に達する可能性が高い」との見解をあらためて表明。短期的に追加緩和期待が市場で浮上しないよう周到に発言している。

ただ、市場にくすぶっている追加緩和期待は、鎮静化する兆しが見えない。市場関係者によると、貸出支援制度が黒田日銀のキーワードといえる「2倍」という事前の想定を上回る規模で拡充されたことから、2%の物価目標達成に向けた日銀の本気度を再認識。目標達成に懐疑的な市場からみれば、実現困難になった場合、「日銀は再び大胆に動く」(国内金融機関)との印象を強めたという。

結果として「期待のマネジメントを試みたようだ」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏)との声が市場から漏れる。インフレ期待と緩和期待の2つの「期待」の微妙なバランスが崩れるタイミングが、実際の追加緩和の時期になりそうだが、今回の総裁会見からそのヒントが直接的に示されることはなかった。

4月の消費増税後もにらみ、期待維持に向けて強気の姿勢を貫く日銀と市場の神経戦が、しばらく展開されそうだ。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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