開業目前、「相鉄・JR直通」ダイヤ作成の舞台裏 11月末開業、海老名―新宿で試運転が佳境に

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直通ダイヤには、少なからぬ特色というか、関心を抱く点がある。例えば列車時隔。朝は1時間に4本で平均15分間隔であるが、実際は12分から19分のばらつきがあり、所要時間にも幅がある。そして朝ラッシュ時1時間に4本も多いといえないが、日中は毎時2本にすぎない点。そのようなダイヤはどのように作られたのか。まずは相鉄を訪ねた。

ネイビーブルーの車体は沿線の風景を映す(撮影:久保田 敦)

「横須賀線や湘南新宿ラインに貨物、成田エクスプレスもある中に入れていただくのですから、難しかった。1時間に4本ならばちょうど15分間隔が理想ですが、貨物線ルートで分岐や平面交差が多いですから、JR東日本にはJR貨物との調整はじめ大変な苦慮を重ねていただきました」と語る。

相鉄のダイヤを作成するうえで根幹を握ったのは、羽沢横浜国大駅である。相鉄側から希望を出しながらも、JRが貨物や成田エクスプレスも入る錯綜したダイヤの中から現実的に直通列車を挿入できる部分を探り出し、まずは羽沢横浜国大駅時刻の素案が提示される。相鉄はそこからスジを延ばし、自社のダイヤに入れてゆく。ゆえに従来のパターンダイヤにはなかった時隔や所要時間のばらつきが生じる。当然ながら線内列車の時刻にも影響する。そこで、それらの影響を最小限に抑えるための調整が双方の社で行われた。

特急で都心直通の「速達性」をアピール

また、列車本数については、もともと都市鉄道利便増進法に基づく速達性向上計画を立案する際に計画されたもので、東横線や目黒線と直通運転する東急線方面の直通本数を朝10~14本、日中や夕夜間4~6本とし、それに相鉄線内横浜方面の利便とも一体的に考えて導き出された。東急との直通は、日吉で折り返している目黒線の延伸が基本と考えられるので、JR直通線のような“上乗せ”とは異なる対応が可能なのだ。

「今回は本数が少ないので、特急を主体にして速達性を打ち出しました。まずは相鉄でスピーディーに都心に行ける点をアピールし、東急直通までに認識を根付かせたい。その一方、日中や土休日ダイヤに各停を多く織り込んだのは、より多くの駅から利用しやすくするためです」

直通列車を相鉄本線系統に絞ったのも、今回の少ない本数の中でいかに利便を引き上げアピールするかを考えての判断だ。いずみ野線沿線からの期待も大きかったが、二股にすると実質的に朝ラッシュは1時間2本、それ以外は毎時1本となってしまう。そこで、いずみ野線には横浜発着の速達列車として通勤特急と通勤急行を新たに設け、直通列車との接続を図ってフォローする。

また、運行管理システムの面で、相鉄とJRの装置は直接結ばれているのではなく、中間に相互をつなぐシステムを介しているため、あまり複雑なロジックにしたくない。そこで列車種別は2つのみ、行先は一本化したという背景がある。

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