テレビ災害報道の限界を超えた台風19号の猛威 あまりに広範囲で多岐にわたる甚大な被害

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テレビはそれらを矢継ぎ早に伝えなければならなかった。

気象庁、国土交通省、各都県の自治体などから出る「情報」を整理しなければならない。

各地の雨量、河川の水位、ダムの貯水量など刻一刻と変わるデータを把握して“危険”が迫るようであればいち早く伝える必要がある。

避難勧告が出たエリアがあればそれを伝えて「早めに、近所の人などと一緒に」と呼びかける。

この先の進路予想とこれから台風が接近するエリアへの注意喚起。そして今現在の「雨・風」の様子を伝える中継リポートの準備と、避難所の様子や被害状況の記者による「取材」の指示……。

テレビ各局の「報道キャパシティー」を超えてしまった

各局の報道局には膨大な情報が集まり、その中から「最優先で」伝えなければならない情報を判断していく。その“瞬間”での優先事項は何か。

できれば台風が直撃している現場からの中継リポートを入れたい。しかし記者・カメラマンの安全も担保しなければならない。この場合、現場に行くまでの道路は寸断される可能性があるので、台風が接近する前に中継場所を想定して事前に現地に入ることが多い。

そして、長丁場になる可能性があるのでスタッフの食事(コンビニおにぎりなど)や宿泊場所なども確保しなくてはならない。ただし災害の場合は地元の人が優先なので、泊まる宿がなくて“車中泊”になることも多い。

一方で「人員」の限界もある。

民放各局で取材に出られる記者は、キー局でも社会部を中心に15人くらいまでだろう。この人数で、「いま起こっている台風被害」を伝えるために関東地方の各地へ取材に行く。もちろん地方局では人数はもっと少ない。「数人」の体制で報道せざるをえない局もある。

「多摩川の氾濫はニュースでやっているけど、栃木のウチのあたりは全然報道されない」

視聴者から報道に対する不満の声も多数上がっていた。そのとおりだとは思うが、豪雨の中や台風通過後に、都心から離れたエリアに行くのは困難が伴うのも現実なのだ。

“物量作戦”が効くNHKでも事情はさほど変わらないだろう。人員は多く、前橋、宇都宮などに支局はあるが、エリアの奥に行くのはやはり物理的にも安全面的にも厳しい。

このように台風19号はテレビ各局の「報道キャパシティー」を超えた感があった。

次ページNHKと民放により複眼的に情報を得られたメリットも
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