三井住友FG子会社として再発進した日興コーディアル証券の課題

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三井住友FG子会社として再発進した日興コーディアル証券の課題

日興コーディアル証券が、10月から三井住友フィナンシャルグループ(FG)の子会社として営業を開始した。国内メガバンクが大手証券会社を買収した初めてのケースであり、発足式に臨んだ三井住友銀行の奥正之頭取は、「銀・証の融合モデルを実現し、日本の金融を進化させたい」と抱負を語った。また日興コーデの渡辺英二社長は、「三井住友FGの一員となったことで、信用基盤と顧客基盤が拡充したことが大きい」と語り、今後の事業拡大に意欲を見せた。

日興コーデは従来からのリテール業務に加え、日興シティグループ証券(現・シティグループ証券)の債券・株式の引き受けなどのホールセール業務も引き継ぎ、10年ぶりにフルラインの総合証券として再スタートする。公的資本を注入され経営再建中の米シティグループ傘下では、信用力の低下が懸念されていたが、三井住友FGの100%子会社になったことで、信用力が安定し、資金調達面でも改善が見込める。

リテール分野では、三井住友銀行と日興コーデ双方の顧客を紹介しあうほか、日興コーデ店舗内への三井住友銀行のATM設置を始めた。

三井住友FGは、大和証券との合弁事業を今年末に完全解消することが決まっており、合弁会社の大和証券SMBCに転籍していた従業員は10月から三井住友FGに戻っている。この従業員が今後、一定の期間を置いて日興コーデへ合流していく。奥頭取は「大和とは10年やってきたが、いろんな人材を育ててもらったことに感謝している」と述べた。

日興コーデの今後の課題について奥頭取は、「まだ完全に羽がそろったわけではない。グローバルリーチ(国際展開)など足りないところは、日興シティとの業務提携や自前での拡充を通じて補強したい」と語った。

日興コーデのホールセール業務はシティグループ証券から引き継いだ引き受け業務のほか、シティグループ証券に出向していた事業法人・金融法人担当チームが日興コーデに戻ってくる。また、日興コーデ自身が自前で100人程度のM&A部隊を擁するほか、トレーディング部門も持つ。リサーチ部門は国際市場分析部を中心に立ち上げつつあるが、当面はシティグループ証券と業務提携していく。海外事業については、シティグループと独占契約ではないものの、協力関係を続ける方針だ。ほぼフルラインとはいえるが、実力的には野村証券や大和証券グループ本社に、かなり水を開けられている。今後は、三井住友FGの顧客基盤も使って、どこまで事業拡大できるかが注目される。

渡辺社長は、ホールセール業務は「証券マンの醍醐味であり、スケールの大きな仕事ができる」と述べるとともに、三井住友FGとは「(リテールも含めて)顧客の重複が少ないため、最高の連携効果が期待できる」とも強調した。ただ、外資を含めて証券市場を巡る競争は激化している。系列関係もビジネスの絶対条件ではなくなった。三井住友FGの取引先企業の取り込みに向けては、日興コーデ自身のホールセール業務を中心とした体制強化が必要不可欠となるだろう。

(中村 稔=東洋経済オンライン)

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