ミクシィ、社長交代の真相は? 朝倉社長が就任1年で顧問に退くのはなぜか

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フォトブックサービスの「ノハナ」や買収した結婚関連事業など、新規事業の収益貢献はまだ少ない。上方修正後の会社計画自体、売上高115億円(前期比8.9%減)、営業利益2億円(前期比92%減)と減収減益。第3四半期に数字がいくぶん持ち直したとはいっても、まだ予断を許さない病み上がりだ。

「社長としてやり残したことはないのか」と問われると、朝倉社長は「いくらでもやりたいことはある。だが、いちばん重要なのはミクシィの中長期の成長の実現に最適な布陣だ。その中で、私が適任だということなら私がやることになるだろうし、新しい取締役が適任となればその人がやることになる」と語った。

次期社長はヒットの立役者

モンストのヒットでいきなり訪れた再成長フェーズ。そこで飛躍を担う次期社長が、mixi事業本部長の森田仁基(もりた・ひろき)執行役員だ。

37歳の森田氏はSNS「ミクシィ」の事業責任者を務めるとともに、モンストスタジオ エグゼクティブプロデューサーとしてモンストを立ち上げ、ヒットに導いた立役者でもある。「今後ミクシィが成長軌道を描いていくためには、サービスや事業寄りで、ヒットした事業を作ってきた森田が最適であろうと経営陣一同で判断した」(朝倉社長)という。

森田氏は「私の経歴を見ると、ゲーム事業というイメージが非常に強いと思う。だが私が目指すのは、人々のつながりを加速させるようなサービスを生み出すことだ」と、ミクシィが必ずしもゲーム会社になろうとしているわけではないことを説明した。

一方、朝倉社長は顧問に就任する。経営の第一線からは一歩引いた立場から、ミクシイの再成長を支援していくという。具体的な職務は「6月までに新しい経営陣と話し合って決めていきたい。6月までは、どういう戦い方がよりよいのか、(新社長に)私の知見や経験を受け継いでいきたい」とした。「ミクシィから離れることも考えているのか」という質問に対しては明確にコメントしなかった。

笠原会長との関係が悪化?

今回のトップ人事と直接関係があるかは不明だが、昨年11月、正社員約30人がいきなり研修部屋に移されたという“追い出し部屋騒動”が起こり、内外に波紋が広がった。この事実上のリストラの経過について、「(実際に辞めた社員がいるかは)従業員の個人情報なので答えられない」(荻野泰弘CFO)として真相を明らかにしていない。

加えて、「そもそも追い出し部屋自体がない」(同)と会社側はリストラを否定するような発言もしている。「人員削減を巡って、創業者の笠原健治会長との関係がギクシャクするようになった」(朝倉社長と親しい関係者)との証言もあり、もはやミクシィ社内ではタブーのような扱いになっているようだ。

社長交代のタイミングなどには少し腑に落ちない点もあるが、ミクシィの業績向上のエネルギーが足元で高まっているのは確か。焦点は、さらに長いスパンにおいて、モンスト頼みではない本当の再成長を見せられるかだ。次のミクシィを担う森田氏の手腕が問われている。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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