ソフトバンク孫社長「まだ満足していない」 買収に次ぐ買収で最高益大幅更新だが

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NTTのセット割には「断固反対」

孫社長はいつものように、各事業について方針を説明した。

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「最大の危機は乗り切った」と孫社長

国内の携帯事業について「NTTドコモのiPhone参入で最大の危機を迎えると言われたが、結果はそうではなかった。KDDIの参入に続いて、最後の危機を乗り切ったのではないか」と総括し、「他社はスマホへの乗り換えが十分に進んでおらず、ソフトバンクにとってはチャンスがある」とさらなる成長に自信をみせた。

今後は1月末に子会社化が完了した端末卸売会社「ブライトスター」(損益計算書上の連結は来期を予定)の購買力を武器に、世界ナンバーワンと自負する通信品質をアピールして販売増加につなげる構えだ。

また、米国で攻勢を強める携帯4位のTモバイルUSの買収が噂されていることに関しては、直接のコメントを避けたものの、「ネットワークや価格など、米国は厳しい競争環境になっておらず、上位2社が寡占状態をエンジョイしている」などと批判。さらなる市場攻略に意欲を見せていた。

スマホゲームでは、スーパーセルのゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」がアンドロイド向けで順調にランキングを上げていることに触れ、「ガンホーのパズドラとトップ争いをしてほしい」と笑顔を見せた。また、中国で3億人のユーザーを抱えるアプリ配信プラットフォーム「Wandoujia」に出資しており、株式の15%を保有(買い取りオプションを行使すれば30%)する筆頭株主であることも明かしている。

ただ、この会見で、最も感情をあらわにしたのは、総務省が検討している、NTTグループによる固定回線とスマホのセット割引の解禁について聞かれた時だった。「NTTは圧倒的なシェアを持っている。もし解禁すれば、ほかの会社は不利な状況で競争しなければならない。世界中でこれだけの支配力を持つ会社がセット割をやっている例はない。なし崩し的に行うのは断固として反対だ」と声を荒らげた。

実際、ライバルKDDIは、ケーブルテレビ各社と提携したセット割引「スマートバリュー」が新規開拓と解約防止の両面で威力を発揮している。近年の好業績はスマートバリューに支えられていると言っても過言ではない。ソフトバンクもセット割引「スマホBB割」をそろえているが、固定回線が光ファイバーではなくADSLのため、競争力は比べものにならない。iPhoneを導入したドコモとは十二分に戦ってきたが、相手がNTTグループでは勝手が違う。さすがの孫社長も警戒せざるを得ないようだ。

 

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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