それでも日経平均は再上昇する可能性がある 2つの重要指標で日本株の行方を読み解く

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このようにIT関連財の在庫調整の進展が確認されるなか、内閣府が公表する機械受注統計の機種別集計で「電子計算機等」の受注額が下げ止まっているのは明るい兆候である。通常、機械受注統計(電力・船舶を除く民需、いわゆるコア機械受注)はマクロの設備投資動向を占ううえで、その先行指標として注目されるが、機種別集計に着目すると、どういった財の引き合いが強いのかを確認できるため、株式市場の分析に応用できる。

「電子計算機等」と日経平均には強い連動性がある

ここで、内閣府の分類に基づく「電子計算機“等”」とは、電子計算機と半導体製造装置の合計である。「電子計算機等」の受注額(原数値)は、1~3月期に前年同期比マイナス14.5%と大幅な減少を記録した後、4~6月期はマイナス1.1%に下落幅が縮小。7月はマイナス5.8%へと再びマイナス幅が拡大したものの、ならしてみれば持ち直し傾向にある。筆者作成の季節調整値では7月が前月比マイナス1.0%と微減も、3カ月平均ではプラス1.1%と持ち直しており、3カ月平均値の水準は2019年3月の直近ボトムから13%程度回復している。IT関連財の完全復活を示唆する強さではないものの、在庫調整が進展するなかで、同セクターの受注が機首をもたげつつあるのは心強い。

機械受注統計における「電子計算機等」は普段あまり注目されないデータである。それゆえ、報道で目にすることは滅多になく、データを確認するには内閣府ホームページで自ら取得する必要がある(幸いエクセルファイルで時系列データが提供されている)。ただし、目下の世界経済を下押ししているIT関連財の復調を先取りするという点において、株式市場にとって非常に重要なデータである。というのも、機械受注統計の「電子計算機等」と日経平均株価には強い連動性があるからだ。このことはIT関連財の需要動向が株式市場にとっていかに重要であるかを物語っている。

冒頭で示したとおり、9月入り後の株価上昇はマクロファンダメンタルズ以外の要因で説明されることが多かった。しかしながら、株価上昇の背景にIT関連財の底打ちを示唆するデータがあったことを認識しておく必要がある。4年周期のシリコンサイクルに従えば、2020年前半頃までにIT関連財の市況が好転し、それに呼応するように日本株が息の長い上昇を続ける可能性がある。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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