「イエレン発言」を都合よく解釈する市場 日経平均は終値で1万4800円を回復

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2月12日、イエレンFRB議長の議会証言に新味はなかったが、各市場で都合よく解釈され、株高・円安となっている。写真は11日撮影(2014年 ロイター/Mary F. Calvert)

[東京 12日 ロイター] -イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言に新味はなかったが、各市場で都合よく解釈され、株高・円安となっている。米債務上限問題にめどが立ち、中国の輸出入も増加するなど好材料も重なり、年初からのリスクオフ相場の反動が続いている。

ただ、米経済や米金融政策の不透明感が消えたわけではなく、上値に慎重な動きもある。

信じたいことだけを信じる市場

4時間にもわたる米下院議員からの厳しい質問に対し、イエレン新FRB議長が毅然と淀みなく受け答えしたことで、投資家も自信を幾分取り戻したようだ。新議長は政策の継続性を強調。米金融政策をめぐる不透明感が和らいだとの声も出ている。「想定通りの内容だったが、突拍子もないことを言わなかったことで不透明感が後退した」(国内銀行ストラテジスト)という。

ただ「新しいFRB議長が、前任者の路線を踏襲すると述べるのはいわばお約束。トップが代われば政策運営も変わる。その点をマーケットはまだ甘く考えている可能性がある」(ニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏)との指摘もある。新メンバーが多く入った米連邦公開市場委員会(FOMC)内の「力学」がどうなるかは、3月の会合まで完全には明らかにならない。

さらにイエレン議長の証言内容の解釈は各マーケットでまちまちであり、不透明感が本当に払しょくされたかは定かではない。テーパリング(緩和縮小)の継続を示唆したことを好感したとするなら、MSCI新興国株価指数<.MSCIEF>など新興国株の上昇は説明が難しくなる。テーパリングに柔軟な姿勢を示したことを好感したならば、米金利の上昇は解釈が困難だ。

各市場で「自分の信じたいことだけを信じている」(SMBC日興証券・シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏)と言われても仕方ないだろう。

自律反発の後講釈か

マーケットは現在、年初から続いたリスクオフ相場の戻り過程にある。日経平均<.N225>は年初から約1カ月間で14%下落。その間に作られたショートポジションが巻き戻される自律反発の動きのなかで、材料が都合よく解釈されている可能性がある。

12日市場で日経平均は続伸し、1万4800円を回復したが後場は伸び悩んだ。東証1部売買代金は2兆3740億円と盛り上がりは乏しい。「買い戻しが中心。海外勢も買い越し基調だが、動きは鈍い」(国内証券トレーダー)という。ドル/円も102円台が重い。

新興国市場への影響は警戒されるものの、米経済が順調に拡大し、米金融政策が「正常化」すること自体は経済の方向としては好ましい。むしろテーパリングを簡単に停止すればFRBの信認に傷がつくかもしれない。「FRBの信認が傷つけばリスクオフどころの話ではない」(東海東京調査センター・シニアストラテジスト、柴田秀樹氏)という。

ただ、テーパリングを裏付けるはずだった米経済の回復に、不透明感が強まっていることで投資家の自信が揺らいでいる。1月米雇用統計は内容がまちまちで寒波の影響を除けば米経済が堅調なのかどうかはわからなかった。

中国の1月貿易収支は輸出入とも大きく伸びたが、統計自体の信頼感に欠けるとの指摘も多い。

野村証券チーフ・ストラテジストの田村浩道氏は「今までリスクオフの動きが極端過ぎたので、足元ではその戻りが出ているという印象だ」と指摘。「1月米雇用統計の悪化が天候要因だけではないとの懸念が出ているほか、前日のイエレンFRB議長の議会証言も特別な内容があったわけではない。ここから一段の下値はみていないが、これでリスクオンに傾くかというと、まだ慎重にみるべきだろう」との見方を示している。

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