「宇宙葬」を選択する日本人、それぞれの事情 宇宙旅行の夢を死後にかなえることができる

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これまで、宇宙飛行士ゴードン・クーパー、『スタートレック』の俳優ジェームス・ドゥーアンをはじめ、世界各国約320人の遺灰が人工衛星に搭載され、現在も軌道上を周回している。人工衛星は、役割を終えたら大気圏に突入し、摩擦によって燃え尽きてしまうため、宇宙のゴミになることはない。

また、遺灰が搭載された人工衛星の現在位置は、「Star Walk」という天体観測アプリを使えばいつでも確認可能。人工衛星のある方角に向かって、手を合わせることもできる。

仲間がお金を出し合って念願の宇宙葬を実現

大阪府のBさん(70代)の息子は、テレビやラジオの制作会社に勤めていた。仕事仲間に恵まれ、休日も仲間と国内外の旅行に出かけるなど、公私ともに充実した日々を過ごしていたが、40代後半で突然体調を崩し、病院を受診したところ、膵臓がんだとわかる。

膵臓がんは見つけることが難しいうえ、進行が早く、Bさんの息子は約1年で亡くなる。

Bさんの息子は生前、「宇宙旅行に行きたい」ことや、自分が亡くなったら「宇宙葬」を希望する旨を周囲に漏らしていた。

Bさんは息子の願いをかなえてあげたいと思い、息子の仲間たちに相談。すると、仲間たちが少しずつお金を出し合い、銀河ステージの「宇宙飛行プラン」(税別45万円)を申し込んでくれた。

2018年9月18日未明(現地時間17日)、ニューメキシコ州スペースポート・アメリカから「スペースロフトXL」が打ち上げられた。Bさんと仲間たちは、ネットで配信された打ち上げのライブ中継を、感慨深い面持ちで見ていた。

フライトに先立ち、見学ツアー・セレモニーが開催され、搭乗者の家族などが参加している(写真:銀河ステージ)

宇宙飛行プランは、ロケットの先端の部分に納骨室が設けられ、胴体の部分には研究機材が搭載されている商業用の無人ロケットを使用。ロケットは、ニューメキシコ州にある商業宇宙船発着基地「スペースポート・アメリカ」から打ち上げられる。

人工衛星は、長期間地球の周りを回る場合が多いが、ロケットは、弾道軌道という弧を描く飛行形態なので、飛行時間は数分から数時間程度。近年旅行社が扱っている「宇宙旅行」も、このタイプだ。

着陸する必要がないので、最終的には大気圏突入時に燃え尽きるか、燃え尽きなくても、砂漠や海など、人がいない場所や立ち入り禁止の場所に落ちるよう管理されている。

また、スペース・デブリ(宇宙のゴミ)については、宇宙時代における重要な問題になると考えられるため、同社ではスペース・デブリを極力増やさないため、有用な人工衛星やロケットにのみ遺灰を便乗させており、遺灰搭載ボックスのみを軌道上に放擲(ほうてき)するようなサービスはいっさい行っていない。

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