マック、吉野家、スタバ「軽減税率」をめぐる思惑 外食は多種多様な動き、実質値下げの企業も

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価格面での対応だけでなく、軽減税率が適用される持ち帰りや宅配など「中食」へのニーズが高まると見て、展開に力を入れる動きもある。

モスバーガーは時間が経ってもおいしく食べられるように、保水性をアップしたバンズに変更した(撮影:今井康一)

モスバーガーは7月、ハンバーガーに使うバンズ(パンの部分)を改良した。保水性をアップした生地に変更し、持ち帰りで時間が経ってから食べてもパサつかないようにした。「2%安い持ち帰りに需要がシフトするなら、対応する必要がある。コンビニとの競争環境も厳しくなる」と、運営会社であるモスフードサービスの広報・IR担当者は強調する。

スターバックスコーヒーも、持ち帰り需要の増加を見据えた施策を打つ。自社アプリを活用し、スマートフォンから持ち帰りの事前注文と決済ができる仕組みを6月に導入した。都内56店でサービスを開始し、2020年中の全店展開を目指す。

ピザや弁当といった飲食店の宅配も軽減税率の対象のため、ウーバーイーツや出前館などの外部事業者を利用した宅配サービスを導入する外食チェーンも多い。時短・簡便志向を受けて、近年大きく伸びている宅配分野は、軽減税率がさらに追い風になりそうだ。

求められる地道なサービス向上

軽減税率実施をきっかけに、顧客を逃すまいと新たな施策を打ち出す外食各社。だが、コンビニやスーパーといった、外食以外のチェーンと顧客の奪い合いが激化する懸念がある。税率8%のコンビニ弁当などに顧客を持って行かれることを恐れる外食企業は多い。

「同業他社だけでなく、食を提供するすべての企業が競合だ」と、吉野家ホールディングスの河村泰貴社長は危機感を示す。吉野家は9月、PayPayなど4種類のQR決済を新たに導入した。これらのQR決済の運営会社と提携した割引に加え、10月1日から15日の期間限定で牛丼・牛皿全品10%オフの販促を打ち、消費増税後に客足が遠のくことを防ぐ。

奇手、妙手だけでは、いずれ顧客にソッポを向かれることになる。外食各社が増税後の激しい競争を勝ち抜くには、地道なサービス向上が求められる。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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