被ばく不安の慰謝料払う和解案、東電が応諾 福島県伊達市、飯舘村の住民1200人に損害賠償

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他地域でもADR申し立て準備

両地区での申し立てにたずさわった「原発事故被災者支援弁護団」事務局長の吉野高弁護士は2月7日の記者会見で、「両申し立てについての和解案は、国の紛争審査会が定めた賠償に関する中間指針に明確に書かれていない損害について認められたという点で画期的だ」と説明した。

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2月7日会見した「原発事故被災者支援弁護団」の吉野高事務局長(左から2人目)ら弁護団

新再建計画には「中間指針の趣旨を踏まえ、合理的かつ柔軟な対応と被害者の心情にも配慮した誠実な対応を求めている」と明記されていることもあり、「中間指針に書かれていないことについては支払い義務なし」という態度を東電が取り続けることが困難になっていたという事情もあった。

放射線量の高い地域に住んでいたにもかかわらず、慰謝料の支払い対象である「特定避難勧奨地点」の指定から外れた伊達市小国地区などの住民には、精神的苦痛および実生活上の制限に対する慰謝料が初めて支払われることになった。その額は1人につき1カ月7万円で、指定が解除された13年3月末までの22カ月間にわたる。

一方、避難指示区域(計画的避難区域)に指定されていた飯舘村長泥地区の住民には、高線量でありながらも避難が遅れたことによる被ばく不安に対する慰謝料として、1人につき50万円(妊婦および子どもは1人につき100万円)を新たに追加して支払うことが決まった。

このうち伊達市小国地区などの住民を対象とした和解内容は、対象人数が1000人にのぼることや総額15億円という総額の大きさでも特筆される。そして同じく高線量の放射線にさらされながら、避難指示がなかったほかの地域の住民に救済の道を開くことにもつながる。弁護団長の丸山輝久弁護士によれば、「ほかにもいくつかの地区でまとまった人数の住民によるADR申し立ての準備が進められている」という。

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