留学するなら、2年間がちょうど良い《若手記者・スタンフォード留学記28》

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 こちらでは、私は外国人、少数民族ですので、主役ではないですし、主役にはなりたくてもなれません。当然ながら、アメリカはアメリカ人の国です。

たとえば、グループワークひとつとっても、自分の得意なテーマや、留学生同士ならば、リーダーシップをとれますが、テーマが土着のものだったり(たとえば、今取り組んでいる、地元の公立学校のコンサルティングとか)、チームメイトがアメリカ人ばかりだと、どうしても、アメリカ人の学生に頼りがちになってしまいます。

私が留学生ということもあり、アメリカ人は優しくしてくれるのですが、人に優しくされる立場にいることが、私にはどうも嫌でたまらない。かといって、彼らに土着のテーマで張り合うには、彼らの10倍ぐらいの労力が必要で、それは費用対効果に合わないですし、他の授業に割く時間がなくなってしまうので、そうはしません。

結局、何が言いたいかというと、情けをかけられる立場に長くいると、甘えのメンタリティーが身に付きかねない気がするのです。地位は人をつくります。それが怖いので、私は「頑張れば主役になることができる」日本に早く帰りたいと思うのです。

ただし、英語力という点では、やはり長期留学のメリットが大きいのでは、という反論もあるかと思います。

その意見は至極もっともで、たった2年間だけでは、世界のインテリと侃々諤々の議論をする英語力は身につきません。きっと、理想の留学スタイルとは、一度2年くらい留学して、日本に帰って仕事に集中しながらも、英語力の研鑽に励み、また数年後に1,2年間、仕事か留学・研究で再び海外に出るパターンでしょう。

私も、多少は向上した英語力をさび付かせぬよう、日本帰国後は、通訳学校に通って、英語を磨き続けたいと思っています(中国語の勉強も始めると宣言した旁ら、そんなに外国語ばかり勉強する時間があるのかは、われながら疑問ですが…)。


佐々木 紀彦(ささき・のりひこ)
 1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2007年9月より休職し、現在、スタンフォード大学大学院修士課程で国際政治経済の勉強に日夜奮闘中。

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