留学するなら、2年間がちょうど良い《若手記者・スタンフォード留学記28》

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 今でも、反論の内容自体は有効だと思っているのですが、もうちょっと落ち着いて抗議すればよかったな、と反論の仕方については反省しています。

というのも、2年近く、スタンフォード大学という小さい国際社会で過ごすと、欧米人リベラルの思考法が肌感覚でわかってくるからです。

リベラルの人は概して、弱い側に立つのが正義だと堅く信じているので、従軍慰安婦問題でも、人権を蹂躙した日本側に弁解の余地はないと考えています。私は、こうした欧米人のリベラル思想は、一つの「バカの壁」だと思っているのですが、その壁をこじ開けるには、相当な論理武装が必要です。

さらに、情報発信の仕方において、日本側にも落ち度があることに気づきます。大事なのは、感情的にならず、相手を論破する論理・ストーリーを、国際的に受け入れられるような形で、発信することなのですが、日本側の主張は英語でしっかり伝わっていません。従軍慰安婦問題では、ワシントン・ポストに一部の論者が英語の広告を出しましたが、書籍、論文などよりまとまった形で説得力ある議論を展開することが不可欠です。

加えて、時が経つにつれ、私が口論したアメリカ人教授は、日本に対し悪意があるわけでなく、彼の父親が有名な駐韓米国大使であったため、韓国に特別な思い入れがあることがわかってきました。1年間の滞在ならば、この教授と一度口ゲンカしただけでオサラバでしたでしょうが、2年目に彼と定期的に顔を会わす機会を得たことで、意見は違うけれど、お互いの主張には耳を傾けようという大人の関係になれた気がします。

2年目になると、努力の成果が目に見えてくる

2年間留学の2つ目のメリット。それは、2年目になると、学問面で自分の力を発揮できるようになってくるということです。

1年では、バタバタして勉学に集中できませんし、やっとエンジンがかかり始めたところで、留学生活が終わってしまいます。

早い英語の議論についていけない1年目は、周りの人間が皆秀才に見えてしまうわけですが、慣れてくると、実は、お互いに能力差はさほどないことがわかってきます。学生の発言が聞き取れるようになってくると、その内容は「あの意見は、新聞に書いてあることと同じだ」「そんな当たり前のことを自信満々で言うなよ(笑)」というケースが多く、鋭いコメントを連発するずば抜けた人間は、ほとんどいません。

個人的に、進歩が著しいと感じるのが、英語のレポートを書くスキルです。

山ほどレポートを書かされるので、表現は稚拙でも、意味が明確で論理の流れが滑らかなレポートを英語で書けるようになってきました。2年目に入ってからは、7本書いた長短のレポートの内、6本で「優」の評価。1年目と比べると、格段の進歩です。一応、文章を生業とする人間として、なんとか面目が保てたというところです(笑)。

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