「集団的自衛権」はなぜ必要なのか?

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「集団的自衛権」が必要な3つの理由

 そもそも、なぜ今になって急に、集団的自衛権の解釈を議論しなければならなくなったのでしょうか。それには大きく3つの理由が考えられます。

 一つ目の理由が、北朝鮮の脅威です。私は北朝鮮の議論に日本は振り回されすぎだと思っていますが、同国が2006年7月にミサイル発射実験、10月に核実験を強行したことで、日本への危機は現実のものとなりました(核実験が成功したかどうかも明確になっていませんが)。

 一方、六カ国協議や国連決議を通じての国際社会の経済制裁も行われていますが、問題を解決するには至っていません。

 このような事態に対処するため、日米はミサイル防衛(MD)を共同開発していますが、ここで集団的自衛権に絡んで問題が生じています。現在の見解では、日本への攻撃は迎撃できるが、例えばグアムやハワイ等、他国を狙ったミサイルは集団的自衛権の行使に当たるので、迎撃できないことになります。

 こうした見解に対し、「ミサイルは発射後10分程度で着弾し、かつ攻撃先を特定することは極めて困難であるので、日本上空を通過するものは全て打ち落とせる方が合理的である。また、そうしなければ、日米同盟は片務的(日本がアメリカに守ってもらうだけ)なものになり、両国の安全保障を確立するには至らない」との考えが影響力を増しています。

 2つ目の理由が、国連制裁決議の船舶検査の必要性です。北朝鮮の核実験を受けて経済制裁が決議され、周辺海域での船舶検査の実施が決定されました。現在、検査は米軍が行い、日本は給油などの後方支援を行うという役割分担を検討していますが、この解釈では、船舶検査の際に米国の艦船が攻撃された場合、海上自衛隊は反撃できないことになります。

 最後の理由が、国際貢献の必要性です。冷戦下では、自衛隊は自国の防衛に専念していればよかったのですが、冷戦終結後、日米安保の再定義が行われ、その役割は変容しています。1997年には新ガイドラインが策定され、99年には周辺事態法等の有事関連法が成立し、「後方地域」に限ってのことではありますが、自衛隊が海外に派遣されることになったのです(正直、私には“周辺地域”と“後方地域”の明確な定義がわかりません)。加えて、2001年の米国同時多発テロ事件以降は、アフガンにおける多国籍軍への給油活動や、イラクでの復興支援等、自衛隊には新しい役割が求められるようになっています。

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