どうなる寝台特急!?カギを握るJR北海道 実は収入源になっている寝台特急

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深夜に貨物列車が青函共用区間を走行できるなら、その時間帯に寝台列車を割り込ませることもできるのではないか。こんな疑問をJR北海道にぶつけてみた。その回答は「寝台列車はお客様の人気も高く、できることなら走らせ続けたい」というものだった。

どうなる?収入源の寝台列車

JR北海道にとって、寝台列車は貴重な収入源である。「カシオペア」「北斗星」「トワイライトエクスプレス」が稼ぎ出す運賃や特急・寝台料金の合計は、もし、つねに満席だったとすれば、JR北海道の収入は年間27億円程度と試算される。急行「はまなす」は定員が「カシオペア」や「北斗星」よりも多いので、乗車率50%と仮定しても年間10億円の収入となる。これらの寝台列車にかかる経費や団体利用による収入を考慮しても、鉄道事業の売上高が833億円のJR北海道にとって、寝台特急がもたらす収入は無視できない数字である。収入確保のためにJR北海道が寝台列車の維持を望むのは当然だろう。

もっとも、青函共用区間については、深夜走行に加えてもうひとつの問題がある。新幹線運行に際して、電圧を在来線基準の2万ボルトから新幹線基準の2万5000ボルトに昇圧させなくてはならないのだ。

現在、青函共用区間で寝台特急の客車や貨物列車を牽引している電気機関車は、昇圧後の電圧には対応できない。そこで、JR貨物は新幹線基準の電圧に対応できる新型機関車を導入する予定だ。試作車がすでに完成しており、各種試験の結果を見ながら量産を開始する。2016年春までに20両を導入する計画だ。この新型機関車に合わせ、検修設備も含めた総コストは190億円となる。

そこで問題となるのは、JR北海道でも新型機関車という新規投資が可能なのかという点だ。現在、青函トンネルを走行するJR北海道が保有する青函トンネル走行用の電気機関車は予備車も含めて9両。すべての寝台列車を走行させるには予備車も含めて5両くらいは新型機関車を導入する必要があるだろう。総額で50億円弱。もし、JR東日本とJR西日本に寝台特急維持の意向があったとしても、不祥事の頻発で安全への投資を最優先に考えなければいけないJR北海道が、寝台列車維持のためにこれだけの投資をできるかどうか。寝台特急の存廃のカギを握るのは、むしろJR北海道かもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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