不都合だらけ「強制転勤」はこうして撲滅できる どんどん声を上げていくしかない

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青野:むしろ要望がある時こそ、会社はチャンスです。イタリアの時間帯で働くということは、日本の時間帯でできないことができるようになるわけです。われわれはクラウドサービスを提供する会社なので、24時間体制を作る方が会社にとってもメリットがあります。

もう1つは給料をどうするかという問題です。社員の人生の変化により、働ける時間や提出できる成果物が変わったり、職種転換の必要性が出たりしたら、会社が給料を柔軟に見直すことです。あらかじめ給料を柔軟に変える制度にしておけば、リモートワークで働いた分の報酬を渡せばいいだけなので、双方ハッピーですよね。でも給料も年功序列で固定的な従来の会社だと、この働き方は難しくなってしまいますよね。

会社の内側から声をあげる必要性

――今年起きた強制転勤の大きなトピックといえば、6月のカネカ問題でした。皆さんはカネカ問題をどう捉えましたか?

青野慶久(あおのよしひさ)/サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工株式会社(現・パナソニック株式会社)を経て、1997年、愛媛県松山市を本拠にサイボウズ設立に仲間とともに参画。取締役副社長に就任。2005年に代表取締役社長に就任する。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を7分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の副会長を務める。著書に『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』など(撮影:今井康一)

青野:カネカの前に1つ面白い話があって。3月に放映されたNHKの『クローズアップ現代+』に、私がゲストで呼ばれたんです。タイトルが「“転勤”が廃止される!? 働き方の新潮流」で、テーマが強制転勤。私はできるだけ番組の都合の悪い場面で、「NHKは強制転勤をやっているじゃないですか」と問題提起しようと思っていたのです。

いざ番組が始まると、メインキャスターの武田真一アナがいきなりフリップを出してきて、「私は熊本出身で、熊本で妻と働いていましたが、私が松山放送局へ異動になると、妻は仕事を辞めることになりました」と、自分の強制転勤の歴史を語りだした。横で聞いていて、私は涙が出そうで……。

おそらく意図としては、内部、つまりNHKの経営に対して問題提起したいのが半分、あとはNHKという団体の都合の悪いことを番組で言える雰囲気になってきたことが半分だったのではと思います。NHKの番組でここまでできるって、ちょっとすごいですよね。ここまで来れば、社会がもう一押し。もっと押していけばいいと思うんですよ。

奥さんがツイッターで転勤問題を告発して話題になったカネカの元社員の方も勇気が要りましたよね。これからは強制転勤で納得いかなければ、どんどん発信すればいいですよ。もしくは辞めてしまう。強制転勤に対する一人ひとりの動きがあれば、いずれ制度としてなくなるのではという手応えを個人的に感じます。

次ページ企業側も強制転勤を続けていると…
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