三菱自動車の来10年3月期は大幅営業赤字へ、再び救済が焦点に

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三菱自動車の来10年3月期は大幅営業赤字へ、再び救済が焦点に

三菱自動車の来2010年3月期は、売上高1兆6000億円(前期比20%減)、営業損益は600億円の赤字(今09年3月期は50億円の黒字見込み)と「東洋経済オンライン」は予想する。

今になって振り返れば、05年の三菱グループ支援後の業績回復を牽引したものは、ひとえに円安と資源国需要の2つだった。2000年初頭におけるマツダの再建のように、商品面での抜本的な再構築がなされなくとも、そこそこの販売増加と収益回復をやってのけたのは、このマクロ環境の力が大きかった。

しかし追い風は、すでに逆風に変わっている。資源国販売はほとんど壊滅状態だ。2ケタの増販で同社を引っ張ってきたロシアの08年10~12月の販売台数は、前年同期と比べて3割減、同様に中東も4割減少だ。原油など資源価格も下落して景気低迷も長引くと予想され、当面は自動車販売は振るわないだろう。為替も、現在こそ円安気味に振れてはいるが、07年の1ドル120円だった時代は、今は昔だ。

もちろん、明るい話題もある。09年後半に「パジェロイオ」の後継的位置づけの新小型SUVが発売される。07年秋の東京モーターショーで1.8リットルエンジンを積んだ「コンセプトcx」として展示されたもので、日本を含め世界主要地域に投入を予定する。業績寄与は小さいが電気自動車「iMiEV」も、09年夏に発売される。

ただ、たったこれだけの新車効果で全体の底上げに繋がるとは考えにくい。コスト面でも、非正規従業員3300人削減、ダカールラリー撤退、原価低減など合理化を強化し、来期数百億規模の効果が出ると見られるが、けっして赤字は免れないだろう。それだけ、この世界的な自動車市場の縮小は甚大だ。

販売減少が続く中、すでに自動車アナリスト達の間では、再び足もとの資金繰りに注目が注がれている。08年12月末時点での現金の期末残高は2580億円。08年9月末時点では3075億円あったので、実に月間160億円のペースで資金流出が続いている計算になる。新規の資金調達面も、金融機関と大きな融資枠を結んでおらず、ジャンク級格付で社債発行もできない現状を考えれば、スンナリとは行かないだろう。もしこのペースが続けば、10年3月期末前後に資金は枯渇する。1つの対策として、三菱自動車は政策投資銀行による政府融資制度の活用を検討している、模様。それでも資金が足りなくなれば最後の手段として株主の三菱グループに支援を仰ぐ、という。

しかし三菱御三家(三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行)の今の経営状況も決して良くはない。支援を受けられずに再編の対象になる可能性も捨てきれない。三菱自動車の経営に再度、暗雲が立ちこめている。

(西澤 佑介)



《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
連本2008.03  2,682,103 108,596 85,731 34,710
連本2009.03予 2,010,000 5,000 -20,000 -60,000
連本2010.03予 1,600,000 -60,000 -80,000 -100,000
連中2008.09  1,213,973 25,361 20,854 12,772
連中2009.09予 830,000 -40,000 -50,000 -55,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
連本2008.03  6.3 0 
連本2009.03予 -10.8 0 
連本2010.03予 -18.1 0 
連中2008.09  2.3 0 
連中2009.09予 -9.9 0 

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