中国の自動車市場はバラ色か、販売台数は米国抜き世界最大へ

拡大
縮小


 「中国市場、世界一へ」--。2009年1月の中国新車(乗用車・商用車合計)販売台数は73万台余と、米国の65万台を初めて超過。主役交代のニュースは世界を駆け巡った。

ただ、中国がバラ色なわけでは決してない。08年はジェットコースターのごとき乱高下を味わった。3月に100万台を超えるなど出足こそ史上最高水準だったが、五輪開催前の7月から雲行きが怪しくなり、8月以降は10月を除き連続して前年割れ。年間では938万台の6・7%増と6年ぶりに1ケタ台の成長へ鈍化し、年初目標の1000万台に届かなかった。「モータリゼーションの初期段階では、販売台数はGDPの1・5倍になるという法則が崩れた」(廖静南・現代文化研究所主任研究員)。

ただ、代替や増車が主の先進国に比べ、中国は8割が新規購入のため経済悪化時の落ち込みが相対的に少ない。自動車購入層の企業家は輸出減の影響を受けたが、「外資系や政府系のサラリーマンの打撃は比較的小さく、貯蓄もある。今は買い時を待っている状態。ほとんどが現金で購入するため、ローンの引き締めなど金融危機の影響も受けにくい」(廖氏)。先進国市場が総崩れとなる中、今年も5~10%の成長が見込まれる中国の動向を、世界はかたずをのんで見守っている。

知られざる大市場「農用車」に熱視線

注目点は、中国政府が4兆元の景気刺激策と合わせて発表した自動車購入奨励策の“効き目”だ。中でも小型車減税が最大の目玉となる。1月20日の登録分から今年末まで、排気量1・6リットル以下の自動車取得税を従来の10%から5%に切り下げる。小型車を主力とする国産メーカーを間接的に援助する政策と見られるほか、「減税というスキームは乗り換えを促進できるかもしれないが、新規購入を刺激するとは思えない」「もともと価格の安い小型車を優遇してもインパクトに乏しい。昨年の在庫調整が一巡して店頭価格は値戻ししており、せっかくの減税効果を打ち消すおそれもある」(いずれも関係者)という指摘もある。

一方、年初から養路費(道路整備費用)の代わりに1リットルにつき1元の燃油税が課されることになった。消費者は燃油コストに敏感になっている。少なくとも、長らくセダンが主力だった市場構造に変化が起こるかもしれない。実際、1月の1・6リットル以下乗用車の販売台数は1・5%増えた(乗用車全体は7・8%減)。まずは、春節が明けた2月の販売台数動向に注目が集まる。

もう一つの奨励策である「農用輸送車の買い替え促進」も少なからぬポテンシャルを秘める。農用輸送車とは1気筒や2気筒のディーゼルエンジンで、もうもうと黒煙を上げながら走る3輪車や小型トラックのことを言う。時速は50キロメートル程度しか出ないが、荷台が広く、3輪車でも500キログラム、小型トラックなら1トン積載できる。農村部では山のような荷物を満載した農用車をよく見かける。

実は、これら農用車は新車台数に含まれない。「公式統計では保有台数700万台だが、実際は2000万台ともいわれる」(廖氏)ビッグマーケットが別に存在するわけだ。今回、政府は、環境汚染や安全性、そして産業振興の面から、3月以降、軽トラックやミニバンの買い替えに財政補助を行うことにした。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT