携帯は今期大赤字、"生存者"富士通の苦悩 連結業績好調でも、あぐらをかいていられない

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赤字拡大を受け、富士通は1月末に新たな携帯電話事業のリストラ策を発表。現在、富士通では携帯電話関連で4000人弱の従業員を抱えるが、このうち4割を他の事業部門などに配置転換する。

東西2カ所にあった国内工場も4月1日をメドに一元化。東の栃木県大田原市の工場では携帯電話生産をやめ、西の兵庫県加東市の工場に集約する。残った加東市の工場では、3DCADや3Dプリンタなどの導入を進めて金型製造を自動化するなど、工場生産性の引き上げに注力する。

“2度目の正直”となるか

加藤CFOは「2014年度以降は収支均衡に戻す」と語った(撮影:今祥雄)

もっとも、富士通全体の業績はアベノミクスの波に乗る。2013年4~12月期(第3四半期)の売上高は7.4%増となる3.3兆円、本業の儲けを示す営業利益は370億円(前年同期は15億円の赤字)という好決算だった。

リーマンショック後、IT投資を絞っていた日本企業がにわかに投資再開に向けて動いており、同社の中核事業であるITサービス事業が伸びている。システム構築受注残高は前年比で2ケタ増となっており、携帯電話の赤字が膨らんでも、3期連続の減収減益からは免れる公算が大きい。

しかし、それが余裕を生んでいたとしたら問題だ。上記のリストラ策を発表した際、「2014年度以降はイーブン(収支均衡)に戻して、事業継続を図っていきたい」(加藤CFO)とした。これは今下期の赤字解消に一度失敗した富士通にとって、携帯電話の収益改善に関する2度目のコミットメントとなる。

「何としても携帯電話は継続する」と、富士通役員は口をそろえて言うが、この2度目の目標が達成できなければ、社内外から撤退論が高まる可能性がある。

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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