金融機能強化法の盲点、日本版レモン社会主義を考える

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金融機能強化法の盲点、日本版レモン社会主義を考える

農林中央金庫や新銀行東京の扱いをめぐって、すったもんだの議論の揚げ句、昨年末に成立した金融機能強化法。「先を読む経営に取り組んでいただき、積極的な検討をお願いしたい」(佐藤隆文金融庁長官)という懸命のアピールが功を奏してか、手を挙げる地方銀行が少しずつ登場し始めた。2月15日現在、同法による公的資金の申請を正式に表明しているのは、札幌北洋ホールディングス(北洋銀行)、南日本銀行、福邦銀行の3行(社)である。

副次的効果もあるのだろう。公的資金の注入申請とは別に将来の資本政策の自由度を広げようと、優先株を発行できるよう定款を変更する動きも出ている。千葉銀行は「資本政策の中で、定款変更が必要か考えていく」としているほか、富山銀行も、現行1000万株という優先株の発行可能株式総数の変更が必要かを検討するという。6月の通常株主総会では、定款変更を議案として提出する地銀がいくつか登場しそうだ。

機能強化法の場合、自己資本比率が4%以上なら、優先株式による資本注入が想定される。しかし、大半の銀行は優先株が発行できるような定款変更はなされていないようだ。「ひとつの節目」(佐藤長官)とされる3月の年度末までに公的資金を注入するのであれば、これから臨時株主総会を開き、定款を変更しなければならない。が、スケジュールを考えるとタイムリミットに近い。

無理が出てきた建前

金融システム救済のため、民間企業の損失(経営の失敗)を国民(税金)がなぜ負担しなければならないのか。米プリンストン大のポール・クルーグマン教授らは「レモンソーシャリズム」(悪化した金融機関、産業の国有化や公的支援)と呼んで、今起きている事態を批判している。このテーマは、平成の金融危機を経験した日本人にとっては、古典的ともいえるかもしれないが、国会審議の議事録を基に考えてみたい。

機能強化法の目的について、政府(金融庁)は「予防的な一種の資本注入」であり、「あくまで資本増強を通じて中小企業金融というものを増強していく」(2008年11月13日参議院財政金融委員会、内藤純一・金融庁総務企画局長)としている。また「機能強化法は、健全な金融システムの下での健全な金融機関に対して審査等を行ったうえで、資本参加を行うもの」(同前、中川昭一金融担当大臣)と述べられている。

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