日本の総合電機業界の見通しをネガティブに変更 《ムーディーズの業界分析》

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コーポレート・ファイナンス・グループ
VP−シニア・アナリスト 廣瀬 和貞

 ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、2009年1月22日、日本の総合電機業界の見通しを安定的からネガティブに変更した。この見通しは、今後12~18ヶ月間の同業界のファンダメンタルズの事業及び信用の状況に対するムーディーズの見方であって、個別の格付けの格上げや格下げの予想を表すものではない。

見通しの変更は、景気の低迷と予想を超えた世界的な需要の減少(特に半導体や電子製品)が、総合電機業界の各社の業績を制約し、財務の柔軟性を低下させるであろうとのムーディーズの見方を反映したものである。さらに、ムーディーズはこの業界の状況がより脆弱さを増していて、見通しにくくなっていると認識している。

日本の大手総合電機各社のコア・マーケットは国内市場であるが、各社の事業の多くは程度の差こそあれ、世界経済や企業の設備投資の同行の影響を受ける。半導体や電子製品などの事業は、世界経済の景況感に対して極めて敏感である。

半導体や電子製品の需要の減少は、従来の予想よりも深刻なものになっており、これらの製品のメーカーは低稼働率や在庫調整に苦慮している。これらの市場は2009年も停滞するとムーディーズは見ている。

ムーディーズはまた、世界経済の減速が、情報・通信サービス事業や産業機械など、大手総合電機各社の他の事業にも影響を及ぼす可能性があると考えている。

日本の大手総合電機各社は、収益とキャッシュフローの維持の点で厳しさが増すであろうとムーディーズは見ている。各社は需要低迷の中で、各々の事業ポートフォリオからどのようにして適切なマージンを生み出していくかに取り組む必要が生じて来るであろう。

 ムーディーズが格付けを付与している日本の大手総合電機会社は、日立製作所、三菱電機、富士通、東芝、日本電気(NEC)の5社である。直近の格付けアクションとしては、ムーディーズは1月15日、富士通の格付けA3の見通しをポジティブから安定的に変更した。1月29日、東芝の格付けをBaa1に引き下げ、さらに引き下げ方向で見直し。2月2日、日立製作所の格付けをA2に引き下げ、さらに引き下げ方向で見直し。2月3日、日本電気の格付けBaa1を引き下げ方向で見直しとした。


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