(第24回)企業の採用意欲は依然旺盛 2010年度新卒採用の実態調査

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(第24回)企業の採用意欲は依然旺盛 2010年度新卒採用の実態調査

採用プロドットコム株式会社
 マスコミで連日報道される2009年度新卒採用内定取消しや派遣社員切り、また、年明けになってからは、プレエントリー学生に対する2010年度新卒採用中止(一部中止)の知らせが激増している。学生にとって経済危機が身近な雇用問題へ変わりつつあり、2010年度新卒は就職氷河期の再来といった雰囲気が漂っている。
 ところが、10~12月期決算発表が各企業で準備されつつある頃にタイミングをあわせて新卒採用担当者と学生向けにアンケート調査を実施したところ、報道される印象とはかなり違う結果も見えてきた。基幹産業である自動車や電機の採用数の大幅減少は致し方ない部分も多々あるが、それが採用市場のすべてを映す鏡ではない。実態を正確に捉えずに印象だけで採用活動を行うと、思わぬ落とし穴に陥ってしまう。

【調査概要】
■企業向け調査
調査:採用プロドットコム(http://saiyopro.com)、東洋経済新報社
期間:2008年12月16日~2009年1月9日
対象:採用担当者の専門サイト「採用プロ.com」にて採用担当者に対してアンケート調査
回答数:430社

■学生向け調査
調査:楽天・みんなの就職活動日記(http://www.nikki.ne.jp
期間:2008年12月16日~31日
対象:Web上にて就職活動中の2010年度卒業予定の大学生、大学院生に対してアンケート調査
回答数:1382人

●求人倍率より「ミスマッチ」を心配すべき

 まずは企業向けの調査から見てみよう。
【図1】
 【図1】は、2010年度新卒採用人数の増減見込みを09年度と比べて聞いたものだ。結果は「昨年並み」が最も多く、ほぼ半数にあたる48.1%(207社)を占め、「減らす」が21.2%(91社)と、「増やす」の12.1%(52社)を10%弱上回った。「未定」が14.7%(63社)あるので確定的なことは言えないが、前年の2009年度が過去最高の求人総数95万人であり、求人倍率2.14倍に達していた(リクルートワークス研究所)ことを考えると、就職氷河期の求人倍率1倍前後といったレベルまでは低下していない。しかし、ここで警鐘を鳴らしたいのは「ミスマッチ」だ。大企業や有名企業を志望する学生が偏ると、求人倍率以上の未内定学生が増えるのは必至であろう。
【図2】
 次に【図2】で昨年まで中堅・準大手のメーカーなどが採用に苦戦していた技術系の採用意欲だけを見てみよう。結果は「昨年並み」が40.7%(175社)、「減らす」が10.2%(44社)、「増やす」が13.7%(59社)と、増やす方が減らす方を若干上回った。
 こうしてみると、事務系に減少の影響がややあるものの技術系の採用意欲は底堅く、事務系学生のミスマッチ解消が氷河期の再来を食い止める処方箋になりそうだといえる。

 バブル崩壊後に新卒採用数を大きく削った影響で社内の年齢構成が大きくゆがみ苦労した経験から、新卒採用数は大きく落とさないという方針の企業が多いが、現在の厳しい経済状況でもその方針はまだある程度は生きているようだ。また、団塊世代の大量退職や若年層の不足感が解消されていないこと、技術系学生の大型採用企業が採用を手控える今こそがチャンスだと考える企業も少なくないことも理由にあげられそうだ。
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