非正規公務員の不条理、安月給で昇給・昇進もないが、責任は正規並みも《特集・自治体荒廃》

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非正規公務員の不条理、安月給で昇給・昇進もないが、責任は正規並みも《特集・自治体荒廃》

新潟県の非常勤職員として30年にわたって働き続けてきた羽田文子さん(56)は、新年度の非常勤職員募集に応募しないことを決めた。羽田さんにとってその決断はつらく厳しいものだったという。

新潟県職員労働組合で非常勤部会長を務める羽田さんは、「雇用継続期間は最長5年、その後は6カ月の期間を置かなければ、再び職員採用に応募することはできない」という、雇用ルールの撤廃を求めて交渉を重ねてきた。「仕事が継続してありながら、年数で区切って入れ替えるのはおかしい」と羽田さんは感じる。だが、「雇用の上限と6カ月の空白期間は必要」とする姿勢を変えないまま、県は新年度の募集に踏み切った。

「県は一定の譲歩をしたというが、求めていた回答を引き出すことができなかった。これはすごく悔しい。しかし、私がこれまで30年間働き続けられたのは、非常勤部会の運動があったから。部会長を引き受けて2年間頑張ってきたが、自分なりにけじめをつけようと思う。組合員が一丸となって運動できたことに悔いはない」(羽田さん)。

県が1月19日に公表した非常勤職員(事務補助員)の「募集のお知らせ」には次のように書かれている。

「継続して勤務できる期間は1年以内」

「勤務実績が良好で、非常勤職員の職が継続される場合には、任用期間を更新する場合がある」

「勤務年数が5年に達した場合は、退職後6カ月を経過していなければ再採用できない」

新潟県はこの「5年・6カ月ルール」を1999年4月に導入。それまで「5カ月勤務、1カ月空白」という細切れ雇用ながら、長年にわたる継続雇用を行ってきた非常勤職員について、厳格な「雇い止め」(雇用打ち切り)のルールを導入した。

雇用の形態はさまざま 雇い止めで職場混乱も

99年度の現行ルール導入に際して、新潟県は非常勤職員の強い反対に直面した。99年4月時には、それまで勤務していた非常勤職員のほとんどに相当する約700名を公開の手続き(選考)によらずに「特例」で再び採用した。その一方で「特例採用者」についても、5年の雇用期限を迎える2003年度末には例外なく雇い止めを行うとした。

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