赤字転落、スカイマークを悩ます2つの板挟み 国内線のテコ入れ策にも大手が立ちふさがる

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スカイマークが国内線に導入を予定している「A330」型機

むろん、スカイマークも無策ではない。同社は、3月下旬から羽田空港発着の主要路線で欧州エアバス製の「A330」型機を順次導入する。現在使用する米ボーイング製の「B737」型機(全席エコノミーで177席)より一回り大きな双通路の中型旅客機だ。

スカイマークはA330の導入に当たり、通常サイズなら最大440席のエコノミークラスが配置できるところを271席にとどめ、その分、「グリーンシート」と名付けた広めの座席を設置し、差別化を図る。これに合わせて、期間限定で客室乗務員の制服をミニスカートワンピースにして、話題づくりも仕掛ける。(関連記事「エアバスとミニスカ、スカイマーク仰天戦略」

LCCは運賃の安さが最大の武器だが、その分、多くの乗客を乗せる必要があるため、一般的な航空会社の機材と比べると、機内での快適性は劣る。スカイマークは大手の半額近い運賃を維持しつつ、水準以上の快適性も打ち出すことで、大手にもLCCにもない、新たな立ち位置を獲得しようとしている。

大手が仕掛ける体力勝負

ただ、スカイマークの動きに対して、大手も抜かりがない。くしくもスカイマークの決算発表と同じ日、JALが国内線の全シートを革張りにするとともに、シート自体をスリムにすることで足元のスペースを最大5センチメートル広げるという戦略を発表した。

「資金面で余裕のある大手に追随された」。スカイマークの幹部はこう漏らす。JALは国内線のシート刷新に合わせて、機内でインターネットが利用できる環境の提供やLED照明の導入も進める予定だ。

さらに、JALは1月22日、4月からの消費増税を踏まえたうえで国内線の普通運賃据え置きを発表している。昨年末に国内線の値上げを発表していたANAが、これに対抗して値上げを撤回するなど、大手2社は体力勝負を仕掛けている。

国内線で大手とLCCの挟み撃ちに直面するスカイマーク。2014年末に成田―ニューヨーク線を就航し、国際線に参入予定。その機材としてエアバス製の超大型旅客機「A380」の導入を控えており、資金繰りの確保は重要課題だ。5期ぶりの赤字転落でキャッシュフローが急悪化する中、A330導入による国内線のテコ入れは、是が非でも成功させなければならないミッションとなってきた。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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