レクサスが国内販売でベンツに勝てない理由 日本に根付かせるために必要な戦略とは?

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一方、レクサスは基本的に在庫を持たず、値引きにもほとんど応じないから売れ行きを伸ばせない。モデル末期になったら、値引きなどは柔軟に対応したい。

レクサスは店舗数も少ない。トヨタの販売店はトヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店の4系列を合計すると、全国に約4900店舗を展開する。対するレクサスは約170店舗だから、トヨタ4系列の3%にすぎない。

しかも出店は東京都、大阪府、愛知県などの都市部に集中して、1県に1店舗の地域も多い。

メルセデス・ベンツも全国に約210店舗と少ないが、正規販売店が乏しい地域では、レクサスと違って複数のブランドを扱う小規模の販売店が普及している。つまりレクサスはトヨタが展開する上級ブランドなのに「日本のどこでも公平に購入できてサービスも受けられる」トヨタの強みが失われた。トヨタが地域格差を生じさせてはならない。

このあたりをトヨタのレクサス担当者に尋ねると「ブランド構築のために店舗は増やさない」というが、顧客に不便を強いるのでは、ブランド構築以前の話だ。敷地面積の広いトヨタ店の一部にレクサスのコーナーを設けるとか、顧客の便宜を優先させて柔軟に対応したい。

レクサスオーナーズラウンジの問題

公平性の欠如では、些細な話だが、レクサスオーナーズラウンジの問題もある。レクサスの店舗では、顧客が待ち時間を快適に過ごせるレクサスオーナーズラウンジを用意するが、一般の中古車販売店でレクサス車を購入したユーザーには、車検や点検で訪れたときにこのスペースを利用させない。レクサスオーナーズラウンジに入れるのは、新車か認定中古車を購入したユーザーに限られてしまう。

一般の中古車販売店でレクサス車を買ったユーザーの共感を得られれば、次は新車を買う可能性も高まるだろう。それなのに「お客様はレクサス以外の中古車販売店で購入されたので、レクサスオーナーズラウンジはご利用いただけません」などと断るから、「中古車のユーザーはレクサスのお客様ではないのかっ!」と反感を買う。

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