東京メトロ「謎の途中駅止まり」はどこへ行く? 「霞ケ関行き」「新宿行き」はその後どうなる

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日比谷線の六本木行きや、副都心線の新宿三丁目行きも同様に、留置線があるから存在する行先だ。日比谷線の六本木駅は広尾寄りに、副都心線の新宿三丁目駅は東新宿寄りに留置線があり、到着した列車は乗客を降ろした後ここに入って折り返す。

東西線は、東陽町着発の列車や妙典着発の列車など、車両基地がある郊外部の駅を始発・終着とする列車が数多く走っている。一方で、都心部の途中駅止まりの列車は、平日朝に東葉勝田台発の九段下行きが1本あるだけだ。同駅と隣の飯田橋駅の間には折り返し用の線路があるためだ。

ただ、この線路で折り返し運転を行うと後続列車の進路をふさいでしまうため、列車の増発が難しい。そこで東京メトロは、後続の列車に影響することなく折り返し運転が可能になるよう、この設備の改良を進めている。簡単にいえば、行き止まりになっている折り返し用の線路を通り抜け可能な構造とする工事で、供用開始は2025年の予定だ。

密かに待機する地下鉄

いったん建設した地下の線路を改良するには相当な手間と時間がかかる。ただ、東西線西船橋方面からの朝時間帯の列車は、大手町など都心部を過ぎると利用者がガクッと減る。その点で、大手町より中野寄りの九段下―飯田橋間にある折り返し線を整備し、途中駅までの列車増発を可能にすることは理にかなっている。

ちなみに、東西線では今年3月のダイヤ改正では早朝に浦安始発の列車が登場したが、この列車は妙典の近くにある車両基地から回送している。これは同駅始発で座れる列車を運転することや、時差通勤の促進などが目的だ。

「謎の行先」の列車は、当然ながらそこで乗客を降ろしてどこかに消えてしまうのではない。一般の乗客からはあまり目に触れない地下の留置線などで、次の運行に備えて密かに待機しているのだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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