巨額補助金はムダ?普及進まぬEV充電器 昨年度補正予算で1000億円計上も…

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充電できる場所がまだまだ少ない

普及が進まないことを受けて、次世代自動車振興センターは1月21日に、今年2月末の申請締め切りを1年間延長。これに合わせて27日には、自動車4社による支援の申請締め切りを今年9月末までに延長している。

補助金の期間が延びたからといって、これから一気に整備が進むと予想するのは難しい。そもそも充電器の整備には、以前から100億円規模の補助金が予算計上されていたが、その消化は数億円レベルにとどまっていた。

昨年度の補正予算では、補助率を2分の1から最大3分の2に引き上げたほか、補助の範囲も充電器本体のみから工事費にも拡大した。実質負担が大幅に減ることから「充電器の設置に弾みがつく」(経産省自動車課)と期待していたが、当てが外れている。単に補助金を増やせばいい、ということではないは明らかだ。

EVの性能向上が優先課題に

現時点で補助金を申請しているのは、自動車ディーラーなどの自動車関連、公共施設、それにショッピングセンターがほとんどを占める。自動車関連と公共施設は、採算が見込めなくても顧客へのサービスを充実させるために導入する。

だが、それ以外の企業は、設置後も継続的に収益を上げる見込みが立たなければ、おいそれと投資しないだろう。EVやPHVの普及台数が少ない中で、充電器による電気の供給から収益を上げるのは容易ではない。現在の補助金申請の大半を占める関係者の充電器整備が一通り済んだ後は、頭打ちになる可能性が高い。

インフラの整備が進まない中、EVやPHVを普及させるには、やはり課題となっている航続距離の延長や電動自動車ならではの性能などクルマとしての商品性を向上していく以外に道はなさそうだ。

(撮影:今 祥雄)

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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