アラフォーの僕らから20代、30代の君たちへ 人生で大切なことはバンドブームから学んだ 

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バンドブームは、私たちに、夢と希望を教えてくれた……なんていう、キレイゴトを言うつもりはない。確かに、夢、希望を感じさせてくれたのも事実だが、むしろ大人の世界の現実、大人の事情を教えてくれた。世の中のルールはつねに変わり、用意されていたレールは簡単に消えるのだということも。

バンドブームという希望と絶望

アラフォー男子が言うバンドブームとは、1985年くらいから1990年ごろにかけて、多数のバンドがデビューし、売れたムーブメントだと解釈している。1985年ごろには有頂天、ウィラード、ラフィン・ノーズはインディーズ御三家と言われていたし、BOOWYが売れ、ブルーハーツが売れた。その前にも、LOUDNESSなどのジャパニーズ・ヘビーメタル(通称:ジャパメタ)は売れていたし、RCサクセションなどは日本を代表するロックバンドになっていた。さらに、1989年にはバンドオーディション番組「いか天」が始まり、社会現象となった。

バンドブームは、広義ではバンド活動ブーム、楽器ブームでもあった。いか天がはやり始めた頃から、クラスの皆は、誕生日やお年玉、クリスマスなどをキッカケに楽器を手に入れ始めていた。中には、仲間同士でバンドをやろうという話になり、メンバーが決まってから楽器を買いに行くというパターンもよく見受けられた。どんな楽器を買うか(買ってもらえるか)で、その家が裕福かどうか、子どもを溺愛しているかどうかも可視化されていった。『GIGS』『バンドやろうぜ』『ロッキンF』などの雑誌には、アーティストのインタビューだけでなく、楽器購入や、奏法のガイド、楽譜、髪の染め方、立て方まで載っていた。気づけば、教室にはエセ真島昌利(ブルーハーツのギタリスト)やエセ布袋寅泰が跳梁跋扈していた。

中高生の頃の周りのバンド事情、そこは美しいとも言い切れない。いやらしい社交の場であり、自己顕示欲が渦巻く場だった。

中高生の頃の学園祭は、いつもカオスだった。中学時代に見た、ヤンキー5人組によるBOOWYのコピーバンドは圧巻だった。「BOOWYは4人だろ!」と東洋経済オンラインを読んでいる、数字に強い意識の高いビジネスパーソンは突っ込みたいに違いない。確かに、本物は4人だ(初期は6人だけど)。ただ、仲間5人の顔を立てなければならなかったわけだ。ヤンキー社会にも、互いを尊重する精神があるわけだ。全員、髪を立てるかリーゼント、ボンタンで演奏する、ツインギター(ひとりがボーカル兼任)+キーボードありという、ハウンドドッグみたいな編成のBOOWYは圧巻だった。彼らがステージ上で見せる、中途半端に陶酔したギターソロ、リーゼントでのヘッドバンギング、数十センチのジャンプも圧巻だった。とりあえず買った楽器で演奏するので、音楽性とまったく関係ない、ついヤンキー魂で買ってしまった変形ギター、ベースで演奏していた。実にロックだった。

そんな私も、高校に入ってすぐにバンドを結成して、学園祭に出た。最初のバンドは苦い思い出しかない。軽音楽部の同期での完全な寄せ集めというか、なんとなく集まったバンドだった。個々人の楽器スキルも高いわけではないし、そもそも、みんながバンドというものに慣れていなかったのだ。あれもいい、これもいいで、方針などなく、流されていく。気づけば、人間関係はぎくしゃくし、いつの間にか楽曲が決まっていたり、ついには、知らないメンバーが入っているという始末だ。

学園祭で、思い思いのきわどい格好をし、私たちはステージに立った。私は、海外のメタルバンド、モトリー・クルー(元リクルートと発音が似ていることで知られる)のニッキー・シックスの格好で、化粧までしていた。まるでジャイアンリサイタルのような金髪、メイクのメンバーもいた。選曲も最悪だ。ジュン・スカイ・ウォーカーズの「歩いていこう」からのHOUND DOGの「ff(フォルテシモ)」からのユニコーンの「大迷惑」というようなちゃんぽん状態の選曲で、ボロボロの演奏をした。演奏自体が大迷惑だ。化粧がとけて目に入ったのが痛かった。いや、それは言い訳で、実際、泣いていた。終了後に自然に解散した。その後、しばらくメンバーとは口をきかなかった。

バンドブームは、こんなトラウマ体験も作り出していた。

次ページ僕たちは、バンドブームで炎上リスクを学んだ
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