「従業員の離職率を下げるには?」(人事責任者) 城繁幸の非エリートキャリア相談

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<城繁幸氏の診断>

 診断:『まず社内の状況を把握せよ』

 年功序列制度の本質は、若いころの報酬を、将来の出世で受け取るというシステムにあります。具体的に言うと、一般的な日本企業では、45歳あたりから「報酬を受け取る側」に回ることになります。逆に、20~30代は中高年を支えなければならないため、相対的に低い賃金で我慢しなければなりません。まあ自分も将来報われるのなら先輩方を支える価値もあるでしょうが、どう考えても働き損で終わるだろうと若者が気づき始めているのが、近年の新卒離職率上昇の一つの要因なわけです。

 一方、設立後間もないベンチャー企業は、平均年齢も20代といった若い企業が中心です。これは人事的には非常に魅力的ですね。

 支えるべき上の世代がおらず、働き次第では年齢にかかわらず、上級管理職へ抜擢されるわけですから。実際、30歳前後で経営陣入りする人間も、こういった企業では珍しくありません。個人的には、やる気のある若い世代には、新興企業にもっと目を向けて欲しいと思っています。

 一方で、新興企業には新興ゆえの弱点もあります。賃金ベースや安定性という点で、やはり大手には及ばないため、そういった単純な数字の比較では、どうしてもアピールが弱いのです。

 特に、学生は社会経験がなく、そういった外面の数字に弱いため、ベンチャーが新卒採用で優秀な人材を確保するのは、至難の業です。そういった点からも、「採用者の歩留まりを引き上げたい」というのは、賢明な選択だと思います。

 さて、貴殿の質問を見てまず気づくのは、責任者自身が「退職者の退職理由をほとんど把握していない」という点でしょう。大企業などでは、これはちょっと考えられないことです。通常の日本企業であれば、退職者に対して人事担当者が面談し、退職理由をヒアリングして社内にフィードバックするのは、ごく普通のルーチンワークです(実際、その面談で退職を翻意させられることも珍しくありません)。

 それによって、社内の構造的な問題点が必ず見えてくるはずです。たとえば、立て続けに新人が辞める職場を調べてみると、「マネジメントに深刻な問題のある管理職がいた」なんていうケースは日常茶飯事なわけです。まずは人事部として、人材が辞める理由を把握することから手をつけるべきでしょう。

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