米緩和縮小、アジア・中南米で資金巻き戻しも

国際協力銀行・渡辺博史総裁に聞く

1月28日、国際協力銀行(JBIC)の渡辺総裁は、米金融緩和縮小を背景とした新興国からの資金流出などの現象が予想され、2014年は国際金融市場にとって「あまりよい年でない」と指摘。写真は2011年8月、都内で撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 28日 ロイター] -国際協力銀行(JBIC)の渡辺博史総裁(元財務官)は、ロイターとのインタビューに応じ、米金融緩和縮小を背景とした新興国からの資金流出などの現象が予想され、2014年は国際金融市場にとって「あまりよい年でない」と指摘、「身構える必要がある」と警告した。

28─29日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)で、仮に資産買入れの減額ペースが拡大するようなことがあれば、市場にサプライズだと指摘した。

中国では今月末に満期を迎える高リスクの金融商品である理財商品の償還に関し、市場で懸念がくすぶっているが、仮に債務不履行(デフォルト)となっても、中国の金融システム全体に影響は及ぼさないとの見方を示した。

また、中国が不良債権処理のため巨額の米国債を売却する事態に発展した場合、国際金融市場の安定維持のため、日本も何らかの協力を提言するのが望ましいと強調した。

ドル/円はリスクオフの下でのマネーフローを反映し、当面は円安方向よりも円高方向に進む公算が大きいとの見方を示したが、仮に月次の経常赤字が続くなかで円安が進めば、円債市場で長期金利が上昇するリスクも考えられるとの見解を示した。

渡辺氏は昨年12月26日に同行の副総裁から総裁に就任した。インタビューは1月27日に行われた。

詳細は以下の通り。

──前週末以降の世界的な株安など金融市場の動きをどうみるか。

「米金融緩和で大量にお金が動いた反動で1─2%株が動くことが最近よくあり、前週末以降の市場動向はあまりあわてる必要はない。アルゼンチンはもともと世界の資本市場の外にいた国にもかかわらず、アルゼンチンの問題が市場に影響を与えているのは、市場のセンチメントがもともと、ぜい弱なためだ」

──今週開催のFOMC、どのような緩和縮小策が打ち出されるとみているのか。

「米連邦準備理事会(FRB)は、時間軸を早くしっかり示してほしい」

「今週のFOMC、資産買入れの減額幅を前回(100億ドル)と変えないというのが普通の見方。減額ペースを加速するようなことがあればかなりサプライズ。この1─2週間の市場の動きを増幅する可能性がある」

「資産買入れの減額ペースを加速する場合には、早期の金利引き上げはないなどのメッセージを出さないと市場が荒れる可能性がある」

「今出ている経済指標からみれば減額ペースを加速する確率は低い」

──中国市場で今月末に理財商品がデフォルトするとの懸念がくすぶっている。

「中国工商銀行が理財商品の価値下落を補てんしないことを公表すると、今後デフォルトが少し顕現化する。ただ、シャードーバンキング(影の銀行)は銀行を通さない直接金融であるため、システミックリスクは起こらない」

「中国は外貨準備も大きく、中国の政府系ファンド中国投資有限公司(CIC)などを活用した(金融機関の)救済などもありうるが、システミックリスクは起こらないだろう」

──渡辺総裁は昨年以降、中国が有事に外貨準備の米国債を売却する可能性を指摘している。

「中国が年金資金不足や金融機関救済のため、外貨準備として保有する米国債を売却する可能性は、引き続き懸念として持っていないといけない。ただ、米国側もニューヨーク地区連銀が米国債を担保にとって中国側に融資するなど、市場への悪影響が出ないような施策を考えていると思う」

「米国債市場は大きいので、中国が金融機関をひとつ救済するために必要な程度の売却で揺らぐことはない。ただ、継続的に毎月1000億ドル、2000億ドルなど売られると、米長期金利が上昇、利回り曲線がスティープ化する」

「このような中国による巨額の米国債売却については、日本も対応を一緒に考えるなど協力余地がある。中国支援でなく世界の金融市場の崩壊を防ぐためであり、日本にとっても必要なものなので、世論の抵抗は少ないのでないか」

「米長期金利が上昇すれば、為替は円安に振れるかもしれない。ただ、日本の近隣のアジア諸国に対して日本政府が支援を発動する可能性もあるかもしれない」

──2014年の世界金融市場の展望はどうか。

「前から2013年と14年はあまり良い年でないと言ってきたが、もう少し身構えないといけなくなってきた」

「今起こっている為替の円高などは、さざ波程度。新興国からは、低い米金利を背景としたリスク性資金が巻き戻しを始める」

「(アルゼンチン市場の変動は)欧州にはあまり影響ない。中南米とアジア、アジアはボスポラス海峡まで含んだアジアでは、巻き戻しが起こる気がする」

──米財務長官による16日の円安けん制発言をどう解釈するべきか。

「原文を読んでないため真意はよくわからない」

「輸出は為替ではなく、製品の質で勝負すべきというのが米国の基本スタンス。発言のタイミングによってはけん制にも聞こえるし、単に常識論とも取れる。解釈は難しい」

──為替相場の見通しはどうか。

「今のドル/円為替水準で、困っているひとは少ないのでないか。最近の為替市場では、1日に2円程度動くことは日常茶飯事なので、105円が102円になっても大騒ぎにするものではない。2桁(100円以下)まで円高が進めば、動きが早過ぎる」

「一方、105円を超え、2月の経常収支が(昨年10月から5カ月連続で)赤字だと日本の国債市場が、若干動く可能性がある」

「ただ、今は新興国から引き上げる資金が日本に回る段階で、ドル/円が107円とか112円とかの水準になることは考えにくい」

──新興国から流出した資金が日本株に流入する可能性はあるか。

「新興国から日本に流れた資金が、日本で株を買うかどうかはわからない。短期証券や債券しか買わないかもしれない。円は収益性のある通貨というよりも安全通貨として選択されているためだ。日本は新興国よりも収益性も少なく、リスクも少ないとみられている」

「(ドルを)102円を105円に戻す口先介入はないだろう。前週金曜から今日までほどの為替の動きが、あと2日ほど続くのであれば、『動きが急なので注視して、必要な対応を取ります』と、誰かが言う可能性はあるかもしれない」

──市場では日銀の追加緩和に対する期待が根強い。

「今の状況で、日銀が追加的に行動をとるほど先行きの大きな変化は起きていない。黒田総裁などは全く考えていないだろう」

「8%から10%への消費増税は、よほど崩壊的な経済の低迷がない限りやるべき」

──2月シドニー開催のG20財務相・中央銀行総裁会議では、何が議題に上るか。

「G20、新興国からは、米国が金融緩和縮小の他国への影響を緩和するよう要望が出る可能性がある」

「前の通貨戦争は先進国が皆で途上国に喧嘩を売ったというのがマンテガ・ブラジル財務相の言い方だったが、(一部米当局関係者のように)量的緩和の是非について意見が時々変わるひとは、(米国が緩和縮小に転じた後は)欧州と日本が米国に喧嘩を売っているといる言ってくることがありうる」

(インタビュアー:竹本能文、梶本哲史)

(編集:田巻一彦)

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