アスクル社長「ヤフーの乗っ取りは許せない」 解任を突き付けられた岩田彰一郎氏が猛反論

拡大
縮小
記者会見で支配株主のヤフーに対し、「成長事業が乗っ取られる」などと反論した、アスクルの岩田彰一郎社長(撮影:風間仁一郎)
「すべてが不可解」「成長事業が乗っ取られる」
オフィス通販や個人向けネット通販「ロハコ」を手がけるアスクルは7月18日、異例の記者会見を開いた。会見では岩田彰一郎社長兼CEOが、アスクルの筆頭株主であり約45%の議決権を保有するヤフーに対し、徹底抗戦する構えを見せた。
事の経緯はこうだ。ヤフーが7月17日、8月2日に開かれるアスクルの株主総会において、岩田社長の再任に反対の議決権を行使する予定であることを発表。それを受けてアスクルは、経営思想の違いなどを理由に、ヤフーとの提携解消を申し入れていることを明らかにした。
しかし、ヤフーはすぐさま、アスクルとの協議は不要であり、引き続き資本・業務提携関係を継続したいという意向を表明。翌18日にアスクルが記者会見を開き、支配株主であるヤフーが、ガバナンスや少数株主、ステークホルダーの利益を無視していることを訴えた。
両社の間になぜ、ここまでの亀裂が生じてしまったのか。社長解任を突き付けられている岩田氏を直撃した(取材は7月18日夜に実施)。

ヤフーの説明は明らかに事実に反する

――18日の会見で、ヤフーによってアスクルの成長事業であるロハコが乗っ取られること、上場子会社におけるガバナンス体制の実効性が確保されてないことなどを問題提起しました。これに対し、ヤフーは、アスクルの社外取締役でアスクルの親会社プラスの今泉公二社長がロハコの事業譲渡を再三指摘していたため、ヤフーとしてロハコを譲渡する考えがあるのか意向を聞いたに過ぎないと説明しています。どちらの主張が正しいのでしょうか?

ヤフーのリリース自体はまだちゃんと読めていないが、今泉氏はある意味、かわいそうな立場に置かれている。今泉氏とは同じ大学で昔から仲がよくて、今でも友人だ。ヤフーにとって今泉氏の提案は渡りに船で、ヤフーはそれを利用したのだろう。

確かに当社の取締役会で今泉氏は前からロハコの赤字を問題視しており、撤退も含めて議論をしていた。ただ彼は、ヤフーに事業譲渡したらいいとは言っていない。ヤフーが「今泉氏の意向をうかがったに過ぎない」と説明するのは明らかに事実と反する。むしろ今泉氏の主張を好都合と捉えて、ヤフーが「ロハコをうちに事業譲渡すれば(アスクルの)時価総額は4000億〜5000億円まで上がりますよ」と今泉氏に匂わせ、今泉氏がその案に乗せられた形だと理解している(7月19日終値時点の時価総額は1432億円)。

そもそもヤフーは2019年1月に、ロハコをヤフーに譲渡することの可否と譲渡可能な場合の各種条件について、当社に検討の依頼をしてきている。事業譲渡を求めた場合、2012年に両社で結んだイコールパートナーシップの契約に違反し、当社からヤフーに対する株式の売渡請求権が発生するため、ここでは「譲渡の可否と譲渡可能な場合の条件について検討してほしい」という表現だった。

だが、実質上は検討を申し入れた翌月の2月末日に期限を切り、機関決定をしたうえ代表者の署名または代表印押印の回答を要請しており、「意向をきいてみただけ」というようなレベル感のものではない。

【2019年7月21日19時52分注記】初出時の記事で、「検討を申し入れた2019年2月末日」としておりましたが、上記のように修正いたします。

社長である私の退任を要求して経営体制の若返りを図るとも言っているが、私だけ変わることに何の意味があるのか。さまざまな点で矛盾を感じている。

次ページヤフーの姿勢はなぜ変わったのか
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT