第1回 ドイツはスポーツ天国か? それはあまりにも日常的!

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年功序列の概念なし

スポーツクラブのエントランス。扱っている競技が示されている

日本のNPOの関係者といえば、「NPOのミッション」を念頭において、社会の役にたつといった志を持っている人が多い。それはまったく否定するつもりもないし、ドイツのNPOも同様だが、スポーツクラブについていえば、かなり気楽だ。

それは歴史が長いために、すでに社会のごく一部として認知されていることが原因だろう。メンバーは子供から大人まで幅広い。全体像としては「仲間」という感じが強く、日本の体育会系のような年功序列の概念などもない。

スポーツクラブでのスポーツはいつするのかといえば月曜日から日曜日までたっぷりだ。毎日やるという意味ではない。各曜日様々なコースがあり、自分にあったコースに参加して汗を流しているわけだ。

子供たちも、最近学校制度がいろいろ変わりだしてはいるが、「基本設計」は午前中でおわり。スポーツはスポーツクラブで行う。話を戻すと筆者の子供もサーカーや器械体操はスポーツクラブで行なっている。だから「高松さんのところは体育会系ですねえ」という返答がなんとも可笑しかったのだ。

また、日本の労働条件からいえば、働き盛りの男性が平日にスポーツというのはけっこうハードルが高い。しかしドイツのスポーツクラブでは午後7時半ごろから始まるようなコースでも働き盛りの男性たちもやってくる。職住近接・短時間労働という労働環境が平日でもスポーツクラブで楽しむライフスタイルが成り立つのだ。ちなみにスポーツクラブのメンバーは統計上、19~26歳、41~60歳の現役組の男性が比率的に多いのも興味深いところだ。

あまりにも日常的なドイツの「スポーツクラブ」。スポーツクラブこそがドイツのスポーツ文化を作っている。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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