バルサ流育成でヴィッセル神戸はどう変わる? アカデミー組織の育成メソッド確立も進める

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トップチームから12歳以下、さらにスクールまで下部組織は年齢別に分かれている(画像:ヴィッセル神戸アカデミーHPより

「例えば、U-12のカテゴリーで勝利したいなら、大柄なセンターバックと大柄なフォワードを獲得すれば勝てるでしょう。でも、身体能力だけに頼ったサッカーをしていたら、U-18の頃にいい選手になるかどうかわからない。

ボールをどのように運んでいくのか考える選手を育成することで、そのときは勝てなくても、将来はいい選手に育つと思います。こうした考えは、バルサでもヴィッセルでも変わりません」

再び、平野氏に今後の展望を聞いた。

「バルサからヒントを得て、どうやってヴィッセル神戸アカデミーのメソッドを確立させていくか。そのため、これまでアカデミー組織はコーチとスカウトグループの2つだったんですけど、昨年からメソッドグループ、エデュケーショングループ、オペレーショングループを作りました。今は指導者にもヴィッセルのメソッドを学んでもらっていて、ミーティングを頻繁に行い、指導方針をすり合わせています。

若手の育成拠点である「三木谷ハウス」(画像:ヴィッセル神戸アカデミーHPより

マルクともよく話しているんですが、技術、サッカーインテリジェンス、フィジカル、メンタル、人間形成の部分も含め、バランスよく統合的に成長させていくことが大事。

ですから、2009年につくられた若手育成の拠点である『三木谷ハウス』のさらなる充実も含め、オフ・ザ・ピッチの整備にも取り組んでいかないといけないと思っています」

ヴィッセルらしいスタイルを構築するために

FCバルセロナから学び、そのメソッドからヒントを得ながら、オリジナリティを作り上げる――。それは、「バルサスタイル」ではなく、いわば「ヴィッセルズ・ウェイ」と言えるだろう。もっとも、育成の成果が目に見えて表れるまでには、トップチーム以上の時間がかかるはずだ。

ヴィッセルがアジアナンバーワンクラブになったとき、何人ものアカデミー出身者がピッチに立っている。そんな未来は、着実な歩みを積み重ねた先にしかやってこない。

第3部終わり(文中一部敬称略)

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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