「かんぽの宿」売却で混沌、日本郵政の躓き 鳩山邦夫総務相が突然の異議申し立て

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「かんぽの宿」売却で混沌、日本郵政の躓き

日本郵政による「かんぽの宿」売却が郵政民営化そのものを揺さぶり、後退させかねない大問題に発展しつつある。

1月6日夜、郵政事業の監督官庁である総務省の鳩山邦夫大臣が、オリックス不動産への譲渡に疑問を呈し「国民が出来レースと受け取る可能性がある」と言い出した。この時点では日本郵政の経営に対する場当たり的な介入のようにも見えた。「2400億円かけて造ったものが(一括売却で)109億円」という批判は減損会計や収益力基準による不動産価格評価を無視したもので、規制改革を推進した宮内義彦氏率いるオリックスへの売却を「出来レース」とするのも論理が飛躍していた。

だが、鳩山大臣は「なぜこの時期に、一括でオリックスへ売却するのか」について繰り返し説明を要求。一方、日本郵政の西川善文社長は1月29日の会見で、「不正などはないと断言する。公明正大な取引で、疑いを持たれるようなことはない」としたうえで、弁護士や不動産鑑定士などから構成した外部委員会を立ち上げ、「原点に立ち戻って」検討する方針を表明した。

それでも事態は沈静化せず、大臣は法律に基づいて、2月16日までにかんぽの宿一括売却の詳細な経緯報告をするように求めている。

終盤で大型物件除外 競争入札の不可解

今後、日本郵政が総務省に入札関連資料を開示していく中で、注目すべき物件がある。「ゆうぽうと世田谷レクセンター(上写真)」だ。

世田谷区の住宅街の中にある同センターは、2階建てのビルにスポーツジムやプールなどを備え、その周辺を21面ものテニスコートが取り囲む。敷地面積が約7500坪。大手鑑定会社が「建物は1969年築と古く、無価値。土地評価額は25億~50億円が妥当だが、戸建て分譲を前提にすれば100億円の評価も可能」と解説する大型物件だ。

昨年4月、メリルリンチ日本証券がスポンサー選定の募集を行った当初、同物件はかんぽの宿等(71カ所)、それに付随する社宅等の施設や首都圏社宅(9カ所)の中に含まれていた。だが、入札過程の11月中旬に売却対象から除外された。昨年11月という時期は、応募当初の27社から入札・審査が進み、オリックス不動産を含む2社に絞られていた段階。つまり最終局面で売却内容を大きく変更したわけだ。

2月3日に行われた社民党議員によるヒアリングで、日本郵政の担当者は「買い手の提示した価格が安かった」ということを理由に挙げた。メリルリンチが作成した案内資料には、日本郵政が譲渡施設の範囲を変更できる旨が記されているため、何の問題もないとしている。しかし、スポンサー候補が2社になってから、重大な変更を行うのは、いかにも不自然だ。

折しも選定を進める最中の昨年9月に起きたリーマンショックで、金融市場を取り巻く環境は激変した。買い手側の資金調達事情も大きく変わったことは想像に難くない。それを配慮して柔軟に大型物件を外して売却を図ったとも考えられる。「競争入札」とは名ばかりで、密室の商談と批判されても仕方ないだろう。

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