電機決算が総崩れ! 半導体再編も前途多難


 三洋電機買収などで前向きに打って出たパナソニックさえも厳しい。「車載用、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話の市場が縮小している。この状況は今後1年から2年は続く」(パナソニックの上野山実取締役)。2009年3月期は巨額の最終赤字に転落する見通しを明らかにし、国内外で27製造拠点の閉鎖と1万5000人の再配置や削減などの事業構造改革を打ち出した。

電機各社の今期業績は総崩れだ。家電で首位のパナソニックは最終赤字が3800億円と大きく、2位のソニーは同1500億円。重電も首位の日立製作所は同7000億円と大きく、2位の東芝は同2800億円。通常なら首位企業のほうが事業環境変化の吸収余力があり業績も安定的となろうが、今回は逆に規模が大きいほど赤字は大きい。これは電機がもはや「勝ち組」「負け組」などない、不況業種と化してしまったことを意味する。

その影響が顕著に出たのが半導体。設備投資や研究開発の固定費が重く、電子機器の市場縮小が直撃する。各社は改善に躍起だ。

ソニーは「システムLSIに続き、半導体撮像素子でも外部委託製造を増やす」(中鉢良治社長)と、半導体事業に再びメスを入れる。日立製作所と三菱電機の合弁会社ルネサステクノロジも「システムLSIで生産品種を絞り込む」(伊藤達会長兼CEO)と戦線縮小へ乗り出す。

一方、NECは半導体子会社のNECエレクトロニクスについて「そう遠くない時期に大きな決断をする」(NECの矢野薫社長)と再編を示唆。08年に子会社へ分離している富士通も「半導体事業をどうするか、いろいろ話は進むと思う」(野副州旦(のぞえくにあき)社長)と、やはり視点は同じだ。そして東芝もシステムLSIなどで「業界再編を視野に入れ、分社化も含めた抜本的構造改革を検討」(西田厚聰社長)と宣言。業界再編への進軍ラッパが鳴り響く。

再編を阻む幾多の壁

だが再編の実現には多くの難関が待ち受ける。

東芝・NEC・富士通の3社で半導体分野の再編話が浮上しているが、「3社合計で半導体工場が25もある。現在の需要なら5工場で十分かもしれないが、残り20工場を閉鎖するには費用負担が大きすぎ、そんな再編はありえない」と富士通首脳は否定する。

再編後の姿を描くのも難しい。「底が見えない今は、大きな決定ができない」(半導体メーカー社長)と慎重だ。

顧客からの抵抗も大きな壁。「業界再編に伴い生産ラインに若干の変更があると、顧客は自社製品に搭載する半導体の品質検査をやり直す必要がある。この認証作業には時間も手間もかかるため、顧客は生産ライン統廃合を伴うような業界再編を嫌がっている」(半導体メーカー)。

ことに重要顧客である自動車業界からの抵抗は障壁となりかねない。自動車業界は安定的かつ安価な調達のため「2社購買」を原則とし、「トヨタ自動車がNECと親密になると、デンソーは東芝と親密になるなど、半導体産業へは分断政策を採ってきた」(半導体商社)。再編による寡占化は望んでいない。

エルピーダは資本増強か

政府も、06年には日立・東芝・ルネサスによる半導体受託製造の「日の丸ファブ構想」を後押ししたが一転、「過度の雇用減少を招く日本勢同士の再編は望んでいない」(経済産業省)。

政府は日本政策投資銀行などを介し、企業へ資本注入する新制度を閣議決定、すでにDRAM専業のエルピーダメモリが「産業再生法改正案が成立した場合には、資本増強の選択肢の一つとして、検討したい」と公表した。ただし同社は合弁相手の力晶半導体など台湾勢との再編・統合を摸索しており、日本勢同士の再編を政府が先導することはなさそうだ。

再編への進軍ラッパが鳴っても、日本の半導体業界は「退くも地獄、進むも地獄」の間で身動きがとれずにいる。

(石井洋平、麻田真衣 撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済)

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