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世界レベルの起業家たちが持つ「型」とは? EY Japan

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「私には男の子が2人いますが、会社のことを3番目の子どもと思うほど愛着がありましたし、父が創業した会社を簡単に売却することはできませんでした。それに、社長としての仕事も、最初こそ信頼を勝ち取るために時間はかかりましたが、父の功績もあって、それほど難しくありませんでした。父は独裁者のように振る舞うことは決してなかったし、ミスを許容してくれる懐の広さがありましたから」

ボンフィグリオリ・リドゥットリ社長、ソニア・ボンフィグリオリ(イタリア代表)

95年に同社初となる海外工場をインドに設立しようとしていたときのこと。それはインド国内の法律が変わるタイミングでもあり、リスクも高いがチャンスも大きい投資だった。それを主導したのがボンフィグリオリだった。

「父が聞いたのは『本当にいいのか』という確認でした。父は私を信頼してくれて、背中を押してくれた。最初は思うようにいきませんでしたが、いい人材に巡り合うことができて、それから事業が好転しました。今では3つの工場があります」

ボンフィグリオリがインタビューの中で繰り返していたのが、「エシカル(倫理的)アプローチ」という言葉だ。多様性を受け入れるための素養、そしてマネジャーの素養としてこの言葉の重要性を説く。それは創業者である父が常々語っていたことであり、社の根幹を成す考え方だという。

「力のない人間をトップにすると、組織が壊れてしまいます。当社は家族経営ですが、会社のトップに立つ人間は能力と経験を持ち、倫理的アプローチができる人でないと務まりません。私には息子2人、おいが2人いますが、それらの素養がなければ会社を継がせることはありません」

人生のウィナーになるために

「従業員に払う給与は、コストでもないし投資とも少し違う。オーナー経営者の『義務』とでも言えばいいんでしょうか」

ケニアで製鉄をメイン事業とするデヴキグループを率いるナレンドラ・ラヴァルは穏やかな表情でそう語る。もともとインドで生まれたラヴァルは、祭司としてケニアに渡った。結婚を機に寺院から出て始めた小さい製鉄所が、デヴキグループのスタートだった。祭司だったことが影響しているのか、その言葉は哲学的に響く。前述の言葉の後は、次のように続く。

「例えば、すぐそこのブランドショップに行けば500ドルの財布が売られていますが、その財布を自分の満足のために買うのと、ケニアの従業員に500ドル払うのとではまったく意味合いが違います。物心つかないときから靴を履いている人と、靴を買えない時代を過ごしている人とでは、靴に対する価値の感じ方が違うのと同じです」

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