楽天流の改革で「ぐるなびの危機」を救えるか 今期は赤字転落、飲食店の解約が止まらない

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ぐるなび再建におけるもう1つの焦点になるのが、全国21拠点に散らばる1000人の飲食店営業スタッフだ。ぐるなびはサービス開始以来、この基盤を武器に個々の飲食店に最適化した販促商品提案や業務サポートを行っており、この点を他社にない強みとしてアピールしてきた。

一方で、人件費負担が大きいのも事実。とくに業績悪化をたどったここ2年ほどは、機関投資家や業界アナリストから「体制の見直しをするべきでは?」という声も上がる。

だが、この営業体制について杉原社長は「サポートの体制はぐるなびが創業以来培ってきた重要な資源」と強調。店内業務のデジタル化サポートやコンサルなど、販促商品提案以外の面でスタッフのレベル底上げを図る必要があることを指摘しつつも、「願わくば、1000人よりさらに増やしたいくらい」(杉原氏)という。

「今の状況は楽天の10年前に重なる」

ぐるなびは今期、上場来初の営業赤字に沈む業績予想を発表している。ストック型の売上高が大半を占める販促支援においては、前年度の減額・解約の影響が大きく出てしまい、すぐに反転を目指すのは難しい。

加えて、ネット予約の宣伝・キャンペーン費用、業務効率を上げるためのシステム費用などは、要不要を精査しながらも高水準に推移するとみられる。

「楽天での日々にはたくさんの成功、いい経験があるが、同時にたくさんの失敗、苦々しい経験もある。ぐるなびの今の状況は、(失敗や苦々しい経験のあった)楽天の10年前にも重なるところがある。そういう点でも楽天の知見を生かし、いろいろな面からぐるなびの再成長を後押しできれば」(杉原氏)。これからが腕の見せどころだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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