グーグルは「家」を賢くできるのか? グーグルのネスト買収とスマートホームの難しさ

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スマートフォン市場は現在、アップルとグーグルのOS、そしてiPhoneやGALAXYというブランドの製品によって世界中のシェアの大部分が占められている。これらは「インターネットにつながる携帯電話」のリプレースだった。最も進んでいたであろう日本であっても10年未満の道具であり、多くの人にとっては初めて持つデバイスだった。そのため、米国シリコンバレーにある数社の企業が新しいスタンダードを設定し、世界中に同じものを売り歩いても、さほど問題が起きない。

ところがスマートホームに関連する製品は、50年単位で利用されてきたもののリプレースとなる。日本人である筆者がサーモスタットをここ30年間の日本での生活で見たことがなかったり、米国のアパートに風呂釜が一切ないように、国や地域の差がより大きく、またより長い習慣を相手にしなければならないのだ。

生活観察からのイノベーションを

スマートフォンやタブレットのように、グローバル向けにひとつのプロダクトで勝負できる領域から、地域や習慣に合わせ寄り添いながら作っていかなければならないのがスマートホームの世界だ。

前述のとおり、スマートフォンのアプリとの連携やネットワークを介さなくても、日本の家電の省電力性やセンサー技術の活用による機能性はトップクラスにある。しかしこれを世界に広められないのもまた、地域差、習慣差によるところが大きい。

しかし、iRobotのルンバのように、リプレースであってもまったく違う価値をもたらし、米国でも日本でも普及しうる製品も見つかるはずだ。あるいはスマートフォンのように、日本では当たり前だが世界の人にとっては初めて持つもの、として提案することもできるかもしれない。

特に日本と米国を行き来していると、日本はその快適さや細部にわたるこだわりなど、生活全体の充実度の点でトップクラスにある。当たり前すぎて気づきにくいかもしれないが、ヒントはわれわれの生活の中にある。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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