欧州でウケる、メイドインジャパン文具の力 元女性誌編集者が発信する、新しいデザイン

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ダイアリーの中面仕様だけでなく、カバーにもこだわりがある。黒のビニール装丁の「ビジネス手帳」ばかりだった当時には珍しく、文庫本や本のカバーのようなデザインにした。ユニセックスに使えるカラー展開や、紙クロスやパラフィン加工を施したコットンなどを素材として使うなど、斬新さが光った。

「昔からビジネスマン向けの手帳はたくさんありましたが、働く女性を意識して作られたダイアリーはほとんどありませんでした。高感度な働く女性のためのダイアリーというのがテーマで、潜在的なニーズは大きいと考えました」

髙城和彦(たかぎ・かずひこ)
株式会社マークス 代表取締役会長1952年東京都生まれ。75年早稲田大学政経学部卒業。出版社勤務を経て、82年に編集制作会社の株式会社メディア・マジックを設立。86年同社のデザイン制作子会社として株式会社マークスを設立し、代表取締役社長に就任。現在は、同社代表取締役会長

髙城氏の「読み」には根拠があった。男女雇用機会均等法が1986年に施行されてから10年以上が経過していたビジネスの現場では、同法の下で就職した総合職の女性が増え、女性の社会進出が本格化し始めていた。それに伴い、仕事上でアポイントメントをとる機会が増加し、スケジュール管理の必要性が高まっていたのである。

「当時はシステム手帳も流行っていましたが、大げさな感じがしていました。実際、重量もある。やはり、女性が常に持ち歩く手帳は、製本タイプの綴じ手帳で、あっさり、シンプル、ミニマムなデザインでなければならないと思ったのです」

編集者時代に、女性のライフスタイルを見つめ続けてきた髙城氏だからこその判断だったといえるかもしれない。4モデル17種類で登場したマークスのダイアリーは、マーケットに登場するや、大きな注目を集め、翌2001年版のコレクションは、ラインナップを倍増させることとなった。

ヨーロッパでも受ける、日本のデザイン

2002年にはリテール事業に進出、2004年にはインターネット販売も開始する。その頃には、アイテム数を増やし、国内の営業拠点や販売店も広げ、売り上げも拡大していった。そんな好調のなか、さらに同社に飛躍の転機が訪れる。

2003年頃から、マークスのホームページ宛てに海外から商品への問い合わせや注文が寄せられていた。そこに、パリの「コレット」の名前があった。コレットといえば、世界中のファッション業界のスタイリストやバイヤー、デザイナーまでもが注目するセレクトショップ。その品揃えやスタイリングはトレンドを牽引するほどである。

そのコレットとパートナーシップを組み、単に商品を卸すだけでなく、コラボレーション商品を開発するなどして、関係性を深めていった。その後、コレットのバイヤーの薦めもあってマークスはパリで開催される消費財見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展し、多くのショップからの注文を受けることになる。2008年にはパリに販売子会社と物流センターを開設し、ヨーロッパ本格進出を果たす。現在は、ヨーロッパ各国に取引先を広げ、米国、アジアにも進出している。

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