大京を傘下に入れるオリックスの狙い 満を持して事業投資の果実を刈り取り始めた

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事業環境の急変で、2009年3月に大京は営業赤字に転落。最終利益では564億円もの赤字を計上する。オリックスも関連損失の計上を余儀なくされるなど、投資の刈り取り時期は後ずれした。しかし、同時期に株式交換と現金出資で200億円近い優先株を取得するなど投資を継続。2013年3月期には営業利益221億円、最終利益151億円と厚い利益を出せるまでに回復している。

子会社化しても大京は不動産事業セグメントには分類しない

大京はマンション分譲など市況に振られやすくボラティリティの高い不動産開発の一本足経営を脱却。ストック型で着実な利益成長が見込める不動産管理、不動産流通が利益面で不動産開発に拮抗するまでに育っている。

こうした収益の多様化、安定収益基盤の確立を確認した上で、満を持して打って出たのが今回の子会社化だ。

一部には、不動産事業拡大戦略の一環と見る向きもあるが、これは正しくない。持ち株比率を増やしてオリックスの傘下に取り込むものの、大京はあくまで「投資事業の対象」という位置づけだからだ。投資対象として期間収益を取り込み、最後は売却してエグジット益を狙う、というのが基本の考えとなる。

残るは最終的な出口戦略

国内投資事業ではすでにエグジットしたあおぞら銀行や、現在進行中で子会社である食品・外食のキンレイや酒類販売の河内屋などと同じと考えればわかりやすい。

オリックスとして、これらはあくまで投資事業であり、食品、酒類販売を本業として育てるわけではない。子会社化しても、大京から上がる収益は不動産事業セグメントには入れず、事業投資セグメントに計上する。不動産開発の柱である子会社のオリックス不動産が不動産事業セグメントに入るのとは明らかに位置づけが違う。

今回の子会社化の発表にあたり、「大京をオリックスグループとして認識するものではない」(オリックス広報)という考えを改めて明確にしている。傘下に取り込むことで、大京のマンション開発とオリックスの太陽光発電事業など両者の連携を一段と進めやすくなるが、これはあくまで副次的な効果でしかない。

そのため、大京の連結子会社化はあくまで投資事業の目線で評価すべきであり、今回見込まれている評価益や期間利益の取り込みは、投資途上の一時的な果実を刈り取るにすぎない。投資案件として成功したかどうかは、あおぞら銀行の場合と同様、オリックスの連結グループを外れるなど、最終的なエグジットの形を見るまで待たなければならない。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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